第525話
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2017年7月10日午後5時。撤収時刻となり、車を停めていた有料パーキングへと歩いていった。疲れはある。明日は病院だ。不眠症の治療と心のケアをしないといけない。多分、精神安定剤や睡眠導入剤などを使うことになるだろう。思う。地道にやっていこうと。
交番勤務時代から20年以上、警察の水を飲み続けている。慣れもあったのだが、決して仕事ぶりが緩んでいるわけじゃない。ただ、以前に比べ、幾分精神的な弛緩がある。ずっと感じていた。無理すると、まずいことになると。がむしゃらに仕事をやれる時代は過ぎた。今は少し気を抜き、ゆっくりするつもりでいる。
90年代後半に入庁し、新宿の街相手にいろいろあった。今だって、決して平和とは言えない。ミステリーやハードボイルドなどのジャンルの小説に出てくるように、この街も荒れ切っている。表面上は何もなくても、中ではいろいろあるのだ。月井も常に感じていた。危機感、クライシスのようなものを。
午後5時12分。車に乗り込み、エンジンを掛けてハンドルを切った。そのまま運転する。夏の夕方の都心の熱が、体を重くした。体調が悪い。40代というのは、こういった年代か?最近、口にこそ出さないのだが、そういったことをよく思う。ずっと耐えてきた。辛いことやきついことにも。
午後5時40分。千代田の本部庁舎に着き、車を停めて一課へと向かう。極めて淡々と行動していた。庁舎内には、夜勤の刑事たちがぞろぞろと入ってきている。歩きながら、すれ違いざま、会釈などをした。
午後5時52分。デスクに着き、パソコンを起動させる。データベース入口でパスワードを入力し、エンターキーを押した。諸々の情報が詰まったページが開く。何かと興味をそそる代物だ。もちろん、そういった感情で見たら、まずいのだろうが……。(以下次号)




