第521話
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2017年7月10日午前10時22分。新宿の街を歩き続ける。疲労は溜まっていた。警視庁所属の刑事も周囲に複数名いるのだが、単に無線を使って応答するだけで、特に深く関わることもない。月井も手元では情報不足だ。もちろん、いろいろな事情や理由があって、警察の業務も回っている。
やはり夏場の繁華街は蒸し暑い。暑気は一向に引かなかった。自販機でアイスの缶コーヒーを一缶買って飲む。新宿にも長く張り付いているのだが、一昔前とあまり変わり映えしないような感じがしているのが現実だ。相変わらずマルBなどが蠢き、街の裏手などに回らずとも、ヤツらのやっている薄汚い商売が透けて見える。欲望の街は水面下でも絶えず動いていた。月井たち刑事は見張り続ける。街にいる、ありとあらゆる人間や、作り上げられた闇の組織などを……。
長年デカをやっていると、確かに度胸は付く。それは十分分かっていた。自分自身、いろいろあって、今があると思える。歌舞伎町交番は現在、町村巡査が一人で仕切っているのだが、大変だろう。昔は交番勤務だったから、その苦しみが理解できる。
一課に在籍していても、繁華街の見回りだけで、事件捜査を担当しているわけじゃない。本来なら、捜査をするべきところなのだが、どうも推理というものが苦手だった。警察学校時代に座学で一通り教えてもらっていても、あまり身に付いてない。
尤も、昨今の刑事事件は、いくら捜査員が必死になっても対応できないぐらい、複雑多岐になっている。将来的にはロボットやAIなどが警察官の職務を担当することになるのだろうが、果たしてそういった機械が複雑な仕事をこなせるかどうか?疑問符が付く。
心の奥底では思う。警察官の資格を持っていても、20年後はどうなるか分からないと。理論通りに行けば、完全に人工知能に取って代わられているかもしれない。もしくは、まだ細々と刑事の仕事をやれているかもしれないとも考える。いくら推察したところで、将来のことなど分からない。月井としては、ずっと現役の警官でいたいと思うのだが……。
午前11時15分。街は絶えず回り続ける。ずっと見張っていた。表面上は治安が収まっていても、内部に首を突っ込めばいろいろある。油断ならない。常にそう思っていた。直に昼で食事休憩を取れるのだが……。(以下次号)




