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新宿  作者: 竹仲法順
3/1001

第3話

     3

 2017年5月17日午後10時25分。月井と今村は2時間ほど夜風に吹かれながら、新宿のど真ん中である歌舞伎町を歩いた。岡田徹殺害事件で、警視庁の捜査員と、所轄で捜査本部の立っている新宿山手署刑事課の人間たちは捜査を進めている。警察官にとって殺しのヤマはろくに寝る間もなく捜査する、重大な対象案件なのだ。

「月井巡査部長、そろそろこのホコテン抜けませんか?」

「ええ。……この街も変わらず猥雑ですし、欲望の捌け口ですからね」

 月井がそう言って頷き、

「近いうちに現場に残っていたDNAが鑑定されると思いますから、待ちましょう」

 と言葉を重ねて、繁華街の歩行者天国を抜ける。今村もだんまりを決め込んだまま、相方に付いていった。今夜は互いに自宅マンションに帰り、明日の午前5時前には新宿山手署の帳場へと出勤するつもりだ。月井もシャワーを浴びて、軽く寝酒を含み、4時間ぐらい休む気でいる。

 2017年5月18日の午前3時22分。自宅のベッドで眠っていた月井のスマホに班長の岸間から連絡があった。月井は着信を見て、すぐに通話ボタンを押し、刈り込んでいる短髪を撫でながら出る。

「おはようございます、班長」

 ――ああ、おはよう、月井君。

「……まだ寝てましたよ。……朝から何の御用ですか?」

 ――現場に残ってた、害者以外の毛髪のDNAが特定されたよ。

「誰のものです?」

 ――高木(たかぎ)梨帆(りほ)、32歳。歌舞伎町のクラブ<ルール―>のホステスだ。港区の自宅マンションに行って、話聞いてきてくれないか?

「分かりました。……場合によっては任同掛けてもいいですよね?」

 ――ああ。高木は4年前、当時交際中だった男性会社員と共謀し、一般人を一人殺害してる。逮捕後、実刑を受けて服役した後、ムショから出てきて、歌舞伎町に乗り込んだらしい。

「前科者ですね?」

 ――そういうことになるな。……今村と組んで、高木と接触してくれ。頼んだぞ。

「分かりました。では」

 電話を切り、軽くベッド上でストレッチして起き出す。シャツを脱ぎ、上下ともスーツに着替えて、髪に整髪剤を付け、整えた。朝一のコーヒーを淹れて飲んでから、自宅の駐車場に停めていた覆面パトカーに乗り込む。今村の住むマンションはすぐ近くだ。拾ってから、港区へと向かうつもりでいた。

 2017年5月18日午前4時45分。今村の自宅マンションに着き、相方のスマホに連絡を入れて、部屋から出てくるのをじっと待つ。午前4時55分過ぎにスーツ姿の今村を助手席に乗せ、走らせた。目的地はマンション街で、いかにもリッチな生活をしているクラブのホステスっぽい。電車や地下鉄を乗り継げば、すぐに新宿へと出られる圏内なのだし……。

 午前5時半ちょうどに、車が高木のマンション前に着いた。揃って部屋へと向かう。今村とは申し合わせて、互いに拳銃を携帯し、玄関の呼び鈴を押す。殺人容疑が掛かっている相手だから、銃器がないと危ない。そう思いながら、朝一の仕事をこなす。一際慌ただしく……。(以下次号)


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