第268話
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2017年6月14日午後零時15分。月井たちの座っているテーブルに食事が届いた。揃って食べながら、栄養補給する。使っていたスマホはいったん脇に置き、食事に集中した。各々疲れている。月井は皿に載っている肉料理を食べながら、ドリンクのアイスコーヒーを飲んだ。確かに炎天下での外回りはきつい。慣れていても、だ。今村も顔が苦痛で歪んでいる。所轄の警官も一定の訓練は受けているのだろうが、警視庁のデカとはレベルが違う。月井のように本庁の警察官は普段から鍛えている。みっちりと。
午後零時50分には食事が終わり、レジで食事代を精算して店を出、歩き出す。新宿の街は夏一色だ。繁華街にはスーツ姿のマルBなどもいる。本店のマル暴もいるようで、月井たちも歩きながら、目が合えば、目線で挨拶する。マル暴もこっちが警察官だと知って、頷いてくるのだ。デカは大変である。縦社会であり、れっきとした階級社会でもあるのだが、横一線にいる刑事同士ならいろんなことを共有し合う。例えば、捜査情報なども全警察職員がデータベースなどで管理し、把握し合っているのだから……。
午後1時35分。月井たちも歩きながら、街を見張る。捜査員は常に無線で応答し合っていた。デカは一際複雑な生き物だ。どんなことがあっても、警察本体を守る。いろんな事件が発生するたびに、臨機応変に対応していた。個々のデカはフェアだが、組織はそうフェアでもない。特に最近は警察がいろんな事態に関与していて、組織の不透明さが俄然増している。時代がそうなのだろう。まるで刑事ドラマやサスペンス小説のように、滅茶苦茶なことも日常茶飯で巻き起こる。本件もその傾向があった。岡田徹は新宿のビジネスホテルの一室で撲殺され、歌舞伎町のホステスだった高木梨帆はお台場で水死している。連続殺人事件として帳場は立っているのだが、不可解なことが実に多い。思う。帝都物産の志村浩はDNAが岡田社長の殺害現場に残っていて、有力なマル被の一人だと。警察の執念の捜査が続いている。容疑者逮捕に向けて、着々と。(以下次号)




