第21話
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2017年5月21日午後1時10分。月井と今村は繁華街の定食屋を出、新宿の街を歩く。日差しが強い。上着を脱ぎ、腕に掛けてから歩いていく。どう見ても、堅気の職業に就いているとしか見えない。刑事は一般市民を守るため、常に先頭に立つ。変わらないスタンスだった。
街は午後も絶えず賑わう。歌舞伎町のホコテンを歩きながら、いろんな人間たちを見張り続けた。ここは欲望の街だ。人口も多く、刑事も身の危険を感じやすい場所ではある。人の流れは繁華街へと集中していた。この手の場所だと、何も言わなくとも相手の思惑ぐらい明け透けに見える。月井も今村も歩き続けた。汗を掻きながら……。
ルールーの前を通ると、兼子がいて、店の前の掃除などをしている。別に月井たちも声を掛けなかった。おそらく高木梨帆は蒸発したままだろう。事件発生からまだ日が浅い。事件における重要参考人はどこかにいる。警察官がウロチョロすると、この手の店は大迷惑だ。風評が下がり、客足も遠のくのだし……。
午後3時15分。月井たちは揃ってコーヒーショップへ入っていった。店内は十分クーラーが利いている。頼んだアイスコーヒーにガムシロップとミルクを付けてもらって飲みながら、軽く息をつく。事件における第三者は多分殺人の実行犯だと思われた。
「夕方の捜査会議で第三者のDNAが発表されますよ」
「ええ。……どんな野郎なんでしょうね?」
「分かりません。ですが、かなり危ない輩だと思いますね」
「月井巡査部長は、もう見当が付いてるんですか?」
「いえ。多分、性別は男性だろうぐらいしか――」
月井がコーヒーの入ったグラスから啜り取る。街は人やモノが絶えず動いていた。今村が、
「高木梨帆のことも気に掛かりますね。事件発生後、消えてるんですから」
と言ってコーヒーを飲んだ。捜査会議ではまた各班の今後の動きに関し、事細かい指示が出されるだろう。岸間班は月井たちのように外回り組が多い。いくら都内で発生した殺人事件でも、テレビドラマやミステリー小説のようにすぐに解決というわけにはいかない。一際地味だった。
午後3時51分。月井と今村はコーヒーショップを出て街を歩く。特にマル対を追ってるわけじゃなく、単なる街の見張りだ。警察は時間と共にいろんな可能性を潰していく。それが事件捜査の基本だ。月井たちも常にそれを実践していた。互いに靴底が磨り減るのを感じながらも……。(以下次号)




