第202話
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2017年6月8日午前5時35分。朝の捜査会議開始まで30分を切り、フロア内は慌ただしくなる。月井もタブレットのキーを叩きながら、作業を続けた。今村もデスクトップ型のパソコンのキーを叩いている。互いに黙々と仕事を続行した。
午前6時になり、会議室で捜査会議が始まる。月井たちも参会し、冒頭で全捜査員が両角一課長に対して敬礼した。会議が開始され、外回りの班の人間たちが次々と発言する。月井も今村もお互い記録を録っていた。確かに早朝の会議は何かが決まることがない。こんな時間から開いても、単なる点呼程度にしかならないのだ。
午前6時半の散会後、月井たちは揃って刑事課を出、外へと向かった。今から食事を取り、街へ出るのだ。仕事が続く。何かと疲れていたのだが、刑事としての一日の勤務は始まっている。気負うことなくやるしかないと思っていた。月井もこのヤマに関わってから一定時間経っているのだから、気持ちの変化も多少ある。
街の一角にある定食屋へ入り、食事をオーダーする。そしてテーブル席で待った。デカも食事を取っておかないと、やれる仕事も出来ない。尋常じゃないほど、ストレスなどが掛かるのだが、月井も楽観はあった。この手の事件捜査には慣れている。交番勤務から一課に配属になり、多数の事件を扱ってきた。本能的に分かるものがある。殺人事件のホシだって、逃げおおせるものじゃない。いずれ必ず捕まる。警察もバカじゃないのだ。新宿の街には常に凶悪な事件が溢れ返っているのだが……。
午前7時2分。月井たちはテーブルに運ばれてきた食事に箸を付ける。外回りだと、エネルギーを使うから、しっかり食べた。何かあっても無線連絡がある。互いに耳に発信機を装着していた。警察官は絶えずやり取りする。すでに新宿の街には捜査員が数名待機していた。そして無線を使い、情報をばら撒く。事件は生ものだ。月井も今村も身構えることがある。この状況下でも、事態が進行しているのだから……。(以下次号)




