第19話
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2017年5月21日午前8時51分。月井と今村は野際仁子からルールーのことを訊き始めた。ICレコーダーは回っている。辺りは静かで物音がほとんどしない。
月井が口を開く。
「お店の方は繁盛してますか?」
「ええ」
「借金などがあったり、近辺の暴力団などとのトラブルがあったりとかは?」
「借財はあるわね。店を開いた時から、お金借りてるし」
「借金の返済などはされてますか?」
「一応ね。運転資金なら十分回ってるわ」
「でも、ホステスを雇うのに相当なお金が掛かるんでしょう?」
「ええ。……でもね、刑事さん、あの子たちはまだホステスとしては安上がりの方よ。ギャラは払ってるけど、銀座のクラブみたいにバカ高いお金は出してないし……」
「高木梨帆さんが無断で店をお休みされているのは、やはり今回の事件に関連しているからで?」
「それは分かりません。梨帆ちゃんは特別優秀なホステスじゃないけど、そろそろ自分の店を出させてあげてもいいって思ってたのよ」
「暖簾分け……ですか?」
「ええ。どこのクラブでもあります。……梨帆ちゃんも実際、歌舞伎町のビル一角にあるフロアを買い取って店を出すことを考えてみたい。最近そのことを口にしてたわ」
「じゃあ、殺害された岡田社長と関わっていたとも?」
「そうね。殺されたみたいだからお気の毒だけど、体のいい金蔓だったみたいだから」
「金蔓?」
「ええ。……刑事さんはホステスが各々演技してるのが分かる?客に尽くすのはお金目当てなのよ」
「では枕営業とか?」
「それもあります。……あたしだってね、若い頃は散々いろんな男性と寝たわ。お金を掠め取るためにね」
仁子が本性を露にしつつある。新宿にクラブ一軒持つのだって、そういった労苦があるのだろう。月井が録音機器を回し続けながら、淹れてあったコーヒーを一口飲む。そして、
「それでは、高木さんが岡田社長とトラブルがあったことも否定の仕様がないわけで?」
と訊く。
「ええ。……あの社長さんも資産家だったからね。裸一貫で巨万の富を築いて、お金なんか腐るほど持ってたでしょ」
月井は勘付いた。やはりエサに群がるハイエナのように、岡田にもいろんな女がまとわりつき、裏で金が動いていたのだろうと。それも何千万とか億単位ぐらいで。店の開店資金なら、それぐらいの金は必要だ。同時に高木梨帆にも協力者がいるものと思われた。岡田から金をせしめるための工作をする誰かが……。(以下次号)




