第182話
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2017年6月6日午前8時20分。新宿駅の各出入り口からオフィス街に掛けて、人の洪水が出来ている。月井たちはそれを眺めながら、各々街の見張りに勤しむ。確かに夏の暑さは体力を奪う。月井にも疲労があった。今村もそうだろう。新宿は多数の人間が絶えず行き交う、典型的な大都会だ。その街に幾分気圧されていた。
午前9時になると、オフィスビルが一斉に営業を始める。そして通りに人の流れは少なくなった。会社員などは皆、エアコンの利いた屋内で仕事をしている。月井も今村も炎天下で、蒸されるように暑い場所にいて、街の見張りを続けた。
絶えず無線が鳴っている。月井たちはそれを聞きながら、無線先でデカたちがどんな会話を交わしているか、頭の中の想像力をフルに駆使し、再現していた。月井は時折タブレットを取り出し、キーを叩いて事件に関する情報を見る。大局的に考えれば、目先のことは気にならない。だが、なるだけ小まめに端末を見ていた。
午前9時25分。今村が缶コーヒーを二人分買ってきて、片方を月井に手渡す。カフェインは切らさないようにしていた。コーヒー中毒気味なのだ。胃壁が荒れかけているのは、過労や不摂生ばかりが原因じゃなくて、コーヒーのせいだろう。もちろん飲み過ぎている時は控えるのだが……。
互いに力を合わせて、街を見張り続けた。繁華街はちょうど朝から昼間に掛けて、シャッターが閉まっている場所が多い。街の中枢部を歩くと、物騒な輩がいるのを見かける。マルBなどはデカにとっても嫌な連中だ。人口が集中する街には、大抵マル暴が散らばっている。ヤツらはお互い持ちつ持たれつでやっているから、月井たち事件捜査専門の刑事は違和感を覚えてしまう。ずっと変わらない繁華街の光景が繰り返される。今も昔も。(以下次号)




