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新宿  作者: 竹仲法順
172/1001

第172話

     172

 2017年6月5日午前9時46分。オフィス街は回り続けている。月井たちは辺りを歩きながら、街を張っていた。月井が時折タブレットを取り出し、キーを叩く。検索などをして、情報収集に努めていた。蒸し暑い。絶えず気温が上がっている。

 今村は喉が渇いたようで、ペットボトルを取り出し、キャップを捻り開けて口を付けていた。そしてタオルで額の汗を拭いている。夏場の警察官の仕事は一際大変だ。月井も常にそう思っている。疲労やストレスで心身ともにやられてしまう。何かとよくない状況が続いていた。だが、月井もあまり考え込まずに、淡々と仕事をこなす。

 午前10時を回り、繁華街の夜の店はどこもシャッターを下ろしていた。新宿は雑多な場所である。金と欲望と女――、そんなものばかりを満たすために、いかがわしい店が軒を連ねていた。月井もこの街で警察官としての仕事を始めて長い。常にマルBなどの筋者とも対等に渡り合っていたのだし……。

 新宿山手署にも所轄のマル暴がいる。実態は警視庁と大差ない。繁華街などに出て、マルBの様子を窺うのだ。月井もその手の刑事たちを知っていた。マル暴とマルBはおよそ見分けが付かない。どちらが悪い人間なのか、まるで分からないのだ。完全に見極められるようになることはまずないだろう。それにデカも目の前のことに必死で、絶えず追われる身なのだし……。

 午前10時45分。月井がビル街でも日陰になった場所で涼んでいると、今村が缶入りのアイスコーヒーを二缶買ってきた。片方を月井に渡し、プルトップを捻り開けて飲む。カフェインは意識を覚醒させた。ようやく仕事が本腰になりそうだ。

 歩きながら、辺りを見る。捜査員と思われる人間が、周辺道路に数名散らばっていた。無線が絶えず鳴り、電波を傍受する。そして応答などがこだました。月井も今村も互いに疲労が滲んでいる。野戦となれば、月井もスタミナには絶大な自信があるのだが、さすがに長丁場は辛い。太陽が照らす。燦々と。(以下次号)


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