第162話
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2017年6月4日午前7時2分。新宿の定食屋で、座っていたカウンター席に食事が届いた月井たちは食べ始める。冷たい水を飲みながら、食事を口へ運ぶ。月井も早朝からの勤務で疲れていたのだが、ご飯に醤油で溶いた生卵を掛けて、付いていた味噌汁を啜り、焼き魚を食べながら栄養補給する。刑事はハードワークだから、しっかり食べないと、持たない。
午前7時半。互いに食事を取り終えて、夏らしく冷茶を飲みながら、ほんの軽く息をつく。月井が立ち上がり、今村も席を立つと、レジへ歩き出した。勘定を済ませて店を出、署へと戻る。朝の新宿は通りに人やモノが溢れ返っていても、基本的には静かだ。お互い署の出入り口の方へ歩く。何もないわけじゃないのだし、満たされない感情も当然ある。
署のデスクで通常通り仕事を始めた。月井はタブレットを開き、キーを叩く。捜査情報はたくさんあった。全部取り込めるわけじゃない。それに横のデスクには今村が座っていて、稀に月井の方を覗き込んでくる。デスクワークは単調で疲れやすい。だが、月井も気を入れてやっていた。外回りの刑事たちはホシを捜すのに躍起になっていて、特に堀田班の関係者は加納猛の身を追い続けている。岡田徹や高木梨帆を葬ったのが、加納だと踏んでいて……。
事件というものは分からない。生ものだから。月井も椅子に座って作業していたのだが、午前9時前に一度トイレに立ち、またフロアへ戻った。今村もデスクトップ型のパソコンのキーを叩き続ける。仕事は続いた。外回りの方が体を動かせていいのだが、今日のところは上からの指令で内勤をこなす。ろくに休む間もなくずっと……。(以下次号)




