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新宿  作者: 竹仲法順
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第16話

     16

 2017年5月20日午後3時35分。月井と今村は新宿山手署の捜査本部に戻った。帳場にいるデカたちは慌ただしく、気も荒い。岸間と会うと、目の下にクマが出来た班長が、

「おう、月井君も今村君もお疲れさん。しばらく捜査本部に待機しててくれ」

 と言ってきた。

「分かりました」

「了解です」

 各々頷き、デスクの椅子に座ってパソコンに向かう。確かに体の芯は疲れきっていた。本部内にいるのは一部の男性捜査員と、雑務などをこなす女性刑事ぐらいで、後は皆持ち場に散っている。

 月井が席を立ち、カップに二人分のコーヒーを淹れて、今村に片方を差し出した。

「ああ、ありがとうございます」

 相方は少しだけ啜ったのだが、その後、すぐに胃の辺りを押さえ込む。そして、

「胃の調子悪いですから、水飲みます」

 と言い、帳場の隅にある水道でグラスに水を汲み、飲んだ。月井も、

「気付かなくて済みませんね。そんなに胃腸が?」

 と言うと、

「ええ。無理してるからかもしれません」

 と返し、軽く俯く。月井がコーヒーを啜りながら、パソコンのディスプレイを見つめていたのだが、やがてチラつく目を押さえ、瞬きをして、手元のマウスに目を落とした。警察は備品などでも古い物を使い続ける。役所の使う費用は抑えられていて、簡単に物を捨てることはしない。この光学式マウスもかなり古いOSの付属品だったようで、一部変色している。

 2時間ほど待機し、午後5時半過ぎに捜査員が大挙して戻ってきた。月井も今村も、他にフロア内にいた警察官も互いを労い合う。この蒸し暑さで外にいるのはしんどいだろう。察するところがあった。

 その日の午後6時25分から捜査会議が開かれ、事件捜査に参加している捜査員や鑑識、それに監察医など、複数の関係者が一堂に会し、報告などが始まる。男性の監察医である鍋島が、

「ご遺体は後頭部殴打による失血死と断定できます。凶器は金属製で、傷口の形状から部屋の飾り物か置き物のようなものですね」

 と言った。鑑識関係者は現場で見つかった第三のDNAについて至急調べる旨、刑事たちに伝える。捜査員たちは荒れていた。事件解決まで予断を許さないと思うのが心理だろう。席上で発言を求められた月井も今村も、新宿界隈の情報を探っていることを言い、あまり突っ込んだことは漏らさなかった。まだヤマはあまり動いてないのだから……。

 捜査会議では引き続き、新宿近辺や現場となったホテル近隣を探るのがメインになると一課長の両角も、理事官の田川も口をそろえる。そして明日以降も捜査を継続する旨で話がまとまった。散会後、月井も今村も岸間のところに行く。班長が疲れた顔で、

「明日も午前5時には出勤してくれ。君たちにはまた、外回りを引き受けてもらう」

 と言い、頷いてみせた。本部出入り口で各々別れ、月井は駐車場に停めていた車へと行く。運転席に乗り込み、エンジンを掛けてアクセルを踏み込んだ。ハンドルを切って、走り出す。夏の夜の新宿は燃え盛るようにヒートアップし、盛り場となっていた。明日もこの街で仕事する。どうしても躊躇いの感情が先行するのだが……。(以下次号)


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