第148話
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2017年6月3日午前5時1分。月井がタブレットのキーを叩き、作業していると、捜査員たちが大量に出勤してきた。午前6時の捜査会議まで1時間ない。すぐにパソコンやプリンターなどを起動させ、会議の準備をし始めた。月井は常に時間に余裕を持っている。他の刑事たちより早く来て、軽く一仕事してから、通常業務へ入るのだ。
今村も午前5時過ぎには捜査本部のフロアに入ってきた。横顔に疲れが滲んでいる。
「おはようございます、今村巡査部長」
「ああ、おはようございます。遅れました」
今村も何かと朝が弱いようで、いつも仕事場に遅れてくる。所轄の人間たちに比べ、警視庁のデカは皆、時間というものを重視していた。特に一課の刑事は事件捜査に臨む際、一分一秒が害者の生命・財産や、ホシの犯行形態・逃亡などを左右すると見て、しっかりと暗黙の掟のように胸の内に刻んでいる。相方は所轄の警察官とあって、その辺りの事情が鈍い。月井もコンビを組んでいて、そういったことに勘付きつつある。
今村が情報を記録したパソコン用のUSBをカバンから取り出し、月井の隣のデスクのパソコンの差込口に差し込んで、キーを叩き出す。互いに無言のうちに仕事を続けた。淡々と職務を行う。フロア内は活気付きつつあった。たくさんの刑事たちが、同じ一つの部署で仕事をこなしながら……。
午前6時になると、大会議室で捜査会議が始まった。一課長の両角を始め、多数の警察幹部が集まって、皆、気を入れる。月井たち岸間班は基本的に遊撃部隊なので、改めて述べる事項などはない。堀田班など、現場担当の人間たちが頻りに発言する。朝の会議は進む。澱みなくずっと……。(以下次号)




