第134話
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2017年6月1日午後5時45分。新宿山手署刑事課の捜査本部内はざわついていた。デカたちは皆、午後6時からの捜査会議の準備をしている。パソコンのキータッチ音やプリンターの作動音など、雑音がたくさん聞こえてきた。月井も今村も押し流されるように、端末のキーを叩く。
午後6時になると、捜査員たちが大会議室へと移動し、会議の準備をした。そして中央席の両角一課長に敬礼する。休めの合図で席に着く。月井たちも臨席した。堀田班関係者が優先的に発言する。特に班長の堀田正臣は頻りに加納猛について話を続けていた。月井も今村も黙っていたのだし、他の警官たちもじっと堀田班のメンバーの発言を聞いていた。
朝夕の捜査会議で何かが決まるということはまずない。捜査報告程度のことがメインだ。月井もタブレットに随時記録を録りながら、話を聞く。今村も手帳とボールペンで記録をしながら、特に何かを発言することはない。
午後6時半過ぎに散会した。月井も今村も岸間班のセクションへと移動する。班長が、
「明日は月井君と今村君は一日内勤だ。外の見張りばかりしてると、疲れるからな」
と言って頷く。
「分かりました」
「了解です」
月井たちは各々返し、刑事課を抜けて、署出入り口へと歩き出した。疲労は蓄積している。だが、車での通勤なので酒場で飲めず、宅飲みだ。署付属の駐車場へと向かった。別にデカ同士で飲みに行くこともなかった。互いに通勤に車を使うから、酒気帯びで帰るわけにもいかない。車にエンジンを掛けて出す。月井は自宅マンションへとまっすぐに向かった。缶ビールや摘みの買い置きはまだある。しばらくは買い物すらせずに済むと思えるのだし……。(以下次号)




