第13話
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2017年5月19日午後8時32分。月井は新宿山手署にある捜査本部を出て、都内の自宅マンションに戻っていった。疲れていたのだが、冷水シャワーで汗を流し、眠る前にソーセージや生ハムなどの摘みを食べながら、酒を飲む。そして午後11時前には泥のように眠った。
2017年5月20日午前3時25分。自然と目が覚めて起き出し、上下ともスーツに着替える。キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲みながら、ネクタイを結んだ。普通なら午前3時過ぎなどはまだ人が寝ている時間帯なのだが、警察官は夜間や早朝などでも活動する。
必要なものを詰め込んだカバンを持って部屋の扉に施錠し、一階のエントランスから、駐車場へと向かう。車に乗り込み、エンジンを掛けて出した。朝の都内は一般道が空いていて、車両はすぐに新宿区中枢部へと走っていく。
各車両から無線連絡が入る。夜間活動していた刑事たちが情報を流すのだ。月井も応答しながら、ハンドルを切っていった。体の奥底に疲れが残っていたのだが、今日も一日、岡田徹殺害事件の捜査員として捜査に尽力するつもりだ。
2017年5月20日午前4時35分。車が新宿山手署に着いた。すぐに刑事課にある帳場へと向かう。月井同様、髪を軽くヘアワックスでセットしてスーツを着た岸間がいて、
「ああ、月井君、おはよう」
と言ってきた。
「おはようございます、班長。……事件に関する情報は集まってますか?」
「うーん、何ともなあ。……とにかく現場には事件発生時、マル害と高木梨帆、それに殺人の実行犯である別の人間がいたってことははっきりしてる。空を掴むような事件捜査なんだが……」
「私も今村巡査部長と共に外回りなどを徹底します。いくらでも挽回が効くでしょう」
「ああ、頼むよ。君は本庁の捜査一課でも新宿区担当だからな。自分の家の庭みたいに知ってると思うし」
岸間がそう言い、コーヒーメーカーでコーヒーを淹れて飲んだ。月井はパソコンの前に座り、調べ物などをする。捜査において見落としがないか、だ。
デカたちは午前6時前には続々と捜査本部に集まってきた。その中に今村もいる。警察官の朝は始まっていた。
2017年5月20日午前7時ちょうどに、点呼を兼ねた捜査会議が開始された。両角一課長や田川理事官臨席の下、デカたちが一日の活動予定などを報告する。月井は今村と共に新宿の街――特に歌舞伎町なのだが――を回るつもりでいた。朝から都内は蒸し暑い。会議中も室内にエアコンが付いていた。一歩でも外に出ると、地獄の暑さなのだが……。(以下次号)




