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新宿  作者: 竹仲法順
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第12話

     12

 2017年5月19日午後3時50分。月井と今村は新宿山手署の捜査本部に詰め続けていた。パソコンに向かっていて、目や肩が疲れる。時折席を立ち、トイレに行った。捜査員は徐々に帳場へと戻ってきている。午後4時半過ぎには新宿の街に散っていた刑事たちが皆戻り、デカ部屋は独特の雰囲気に包まれた。

 月井が班長の岸間からカップ麺を一個もらい、お湯を注いで作ってから食べていると、今村が、

「月井巡査部長も食事はイケる口なんですね」

 と言ってきた。月井が、

「私も食べるものを食べないと、出来る捜査も出来ませんから」

 と返し、麺を啜る。今村はコーヒーを一杯淹れて飲みながら、デスクの背凭れに凭れ掛かり、幾分気を抜いた。そこに両角一課長と田川理事官がやってくる。

 月井が腰を上げ、

「一課長、理事官、お疲れ様です」

 と言って頭を下げると、他のデカたちも一斉に敬礼した。両角が、

「ああ、皆、捜査ご苦労さん。……何か新たに分かったことはあるか?」

 と岸間に訊く。

「今のところ、有力な手掛かりは何も……後は害者のご遺体の解剖所見と現場の様子から推測するしかないですね」

「岸間君、デカを何度でも臨場させなさい。君たちは捜査一課や刑事課の刑事の実態を知ってるだろ?執拗なぐらいの捜査が必要なんだ。私も若い頃、前の一課長で今の刑事部長の重松警視長にそう言われてた。『両角君、デカは現場なんだ。何度でも見ろよ』と」

 東大法学部卒の重松警視長はれっきとしたキャリア組で、ノンキャリアの両角とは違う。ずっと背広組のトップを走り、刑事部長へと上り詰めているから、さほどの苦労はなかったのだ。だが、なぜかしら重松は刑事を使うのが上手い。月井も今村も傍から見て、そう思っていた。重松と両角は警視庁内では先輩・後輩の間柄なのだが、いろいろあったらしい。刑事の苦労話は後々までの語り草となる。特にノンキャリア入庁で、ヒラを経験した両角の話は面白い。

「引き続き、捜査を続けてくれ」

 両角がそう言って田川と共に帳場を去ると、捜査本部内はピリピリし始めた。月井も食べ掛けだったラーメンを食べ終えて、またパソコンに向かう。捜査会議がまた開かれる手筈だ。デカ部屋が騒がしくなると、自ずと警察官は本来の職務を遂行していることになる。まあ、いつものことで慣れてはいても……。

 2017年5月19日午後5時15分。捜査本部に全捜査員が集結し、捜査会議が開かれた。緊張感が戻る。月井も胃腸炎の持病があったのだが、胃薬などを持ち歩き、服用していた。刑事にとって胃腸の具合などは悪化しやすい。事件捜査時は誰もがそうだ。ハイテンション状態を強いられるので……。(以下次号)



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