第110話
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2017年5月31日午前5時過ぎ。一課の刑事も、所轄の捜査員も次々とフロア内に出勤してきた。月井もタブレットのキーを叩きながら、仕事を続ける。プラスチック製のカップにコーヒーをブラックで一杯淹れて飲みながら、作業していた。疲れていたのだが、頭が新鮮なうちに一仕事終わらせて、朝の捜査会議に臨んだ方がいい。そう思い、ディスプレイに向かって作業を続ける。
やがて今村が来て、
「おはようございます、月井巡査部長」
と朝の挨拶をしてきた。
「ああ、おはようございます。……仕事、しっかりこなしてくださいよ」
「分かってますよ。私も朝、起き辛くて」
今村がそう言い、空きデスクに座って、デスクトップ型パソコンのキーを叩き始める。独身生活なのだろうし、朝起きが苦手なのは分からないこともない。月井だって、今の生活スタイルになるまでに、ある程度の時間が掛かったのだし……。
互いに無言のまま、手元のキーを叩き続ける。朝は何かと忙しい。一日のスタートだからだ。気を抜けない。作業自体、朝とか夕方などにすることが多い。今日は街の見張りだから、きついだろう。慣れはあっても、メンタル面などで疲れが生じる。月井も今村も、互いにそう感じていた。
午前6時が近くなると、課内が慌ただしくなる。そして直に捜査会議が始まろうとしていた。両角一課長の他に、新宿山手署の幹部が勢ぞろいして、だ。また今日も忙しくなる。合間に休む時間はあるのだが……。(以下次号)




