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新宿  作者: 竹仲法順
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第11話

     11

 2017年5月19日午後1時26分。月井と今村は揃って新宿の街を歩いていた。殺人事件を担当しているから、気を抜けない。街は人通りが多く、5月という季節柄、何かと蒸し暑い。

 高木梨帆は単に岡田徹殺害の現場に居合わせただけじゃないだろう。きっと事件には何らかの形で関与しているものと思われる。実際、岡田を殴打して殺害したホシは別にいるはずだ。非力な女性にあの殴り方はない。

 歌舞伎町のクラブ、ルール―は平日の昼間閉店している。月井たちが店の前に行くと、ちょうど野際兼子がいて、辺りの掃除などをしていた。

「兼子さん、こんにちは」

「こんにちは」

 月井と今村が各々挨拶すると、

「ああ、刑事さん。こんにちは」

 と返事してすぐに視線を逸らす。月井が、

「兼子さん、仁子さんはいまどちらに?」

 と訊くと、

「ああ、姉なら今自宅ですよ。あたしも姉の行動パターンは正直読めなくて」

 と言って掃除やゴミ拾いなどをしながら、店の前を綺麗に整える。この街はクラブや風俗店などが乱立しているから、衛生上よくないのだ。クラブ関係者も掃除などを徹底している。今村が、

「仁子さんは普段から昼はご自宅なのですか?」

 と訊いたので、兼子が、

「ええ。姉は夜が遅いから、昼間寝てるんです。……妹のあたしは夜昼なくて働き詰めなんですが」

 と言い、拾ったゴミを袋に捨てた。

「お疲れでしょう?」

 月井の問いに、

「いえ、もう慣れました。あたしも新宿生活長いんで」

 と言って軽く笑う。今は地味な普段着を着ているのだが、店にいる時は少々派手なドレスを身にまとい、綺麗に着飾っている。野際姉妹が年齢の割に見目麗しいのは、おそらく端正な顔立ちや、見惚れるほどに美しい体のラインなど、元がいいからだろう。

 ルール―はホステスが8名ほどいて、接客している。新宿では良好に売り上げを伸ばし続けていた。基本的にお座敷代は高いのだが、殺された岡田社長のように金持ちが夜な夜な集まる。ママの仁子やホステスたちは、常に男性の欲望の虜だ。

「無理なさらないように」

「刑事さんたちこそ、体調には十分お気を付けくださいね」

「お気遣いありがとうございます。では」

 月井が一礼し、今村も頭を下げると、兼子が見送った。

「何か知ってますね。今回の事件の裏にあるものを」

 店を離れた月井が今村に耳打ちすると、

「私もそう思います」

 と今村が返し、上着を脱いで腕に掛けた。互いに仕事の合間に剣道などの稽古をしていて、腕は丸太のように太い。筋肉質だった。それに射撃なども訓練するから、鬼に金棒である。刑事の鍛え方は並じゃない。特に月井のように捜査一課にいれば、凶悪犯などに遭遇する可能性が高いから、尚更だ。

 2017年5月19日午後2時45分。月井たちは新宿山手署刑事課の捜査本部に戻った。各々帳場内にあったパソコンに向かう。大きなフロアには数人の男性捜査員と、雑務をこなす女性警察官がいて、本部は常に回り続けていた。(以下次号)


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