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新宿  作者: 竹仲法順
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第1話

     1

 2017年5月17日正午過ぎ。新宿の街は喧騒に溢れ返っていた。歌舞伎町などの繁華街には大勢の人がいて、絶えず行き来し、賑わう。

 月井謙太郎は上下ともグレーのスーツを着こなして、街を歩き続ける。暑い。この数日間、東京の街は陽気があって、ひどく蒸す。月井はスラックスでも腰骨が当たる部分にフォルスターを巻いていて、拳銃を一丁差している。警視庁捜査一課のデカなのだ。

 時折無線が鳴る。イヤホンで聞き、すぐに応答していた。辺りは飲み屋や風俗店などがずらりと並んでいて、人間の夜の欲望の塊だ。

「こんにちは、月井巡査部長」

「ああ、寺田警部補。お疲れ様です」

「君はこんな真っ昼間から、繁華街の見回りですか?」

「ええ。……警部補はなぜまたここに?」

「いや。私もね、新宿山手署のデカだから、定時巡回してるんだよ」

「……」

 月井は一瞬黙った後、軽く笑みを浮かべて、

「警部補、最近新宿の街も物騒ですから、お気を付けください」

 と言った。寺田も「まあね。じゃあな」と一言言って、行き過ぎる。月井は普段から刑事としての職務以外に空手や逮捕術の稽古などをやって体を鍛えているから、筋骨隆々だ。

 街は乾いていた。潤いがない。欲望の捌け口ばかりで。そしてその日の午後1時を回る頃、繁華街から離れたビジネスホテルの客室で、男性の変死体が一体発見される。月井も捜査要請を受けて、すぐさま臨場した。

 男性は岡田徹、45歳。都内に本拠地を持つIT企業の若手社長だった。プライベートでは妻子持ちで、たまたまその日は仕事で新宿に来ていたらしい。害者は所持金等に手を付けておられず、なくなったのはデータが入っていたUSBだけだった。

「後頭部殴られてますね。失血死かな?」

 白手袋を嵌めた所轄のデカたちが話している時に、月井が入ってきた。新宿山手署の署員で寺田の同僚の今村巡査部長と門倉巡査がいる。今村が月井に、

「おう、一課のデカさんのご登場ですね」

 と言ったので、月井が、

「ええ。お手柔らかに頼みます」

 と返す。遺体が室外に運ばれた後、新宿山手署副署長の新井が臨場してきて、事件の管轄である所轄署に本庁との合同捜査本部が設置される旨、話がまとまる。ちょうどその日の午後4時を回る頃だった。街には相変わらず大勢の人が流れている。帳場には40人ほどのデカが詰めて、事実上、事件捜査が始まった。(以下次号) 


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