第2朝 A chaild loved by death
......俺、病院に運ばれてます。
俺としてはなんの異常もないのだが、生まれた時に産声を上げなかったので、念のためということだ。
あの時、自分が赤ん坊になっていると気づいて咄嗟に何もできなかったが、泣き真似でもした方が良かったかもしれない。
正直、面倒くさい。
この分だと言葉をちゃんと習うまではカタコトで話した方がいいかもしれない。
まぁ、今は実際カタコトでしか話せないが。
日本で小学一年生の六歳ほどになれば言葉は習うだろうし、仮に習わなくても話すくらいはできるようになっていても不自然ではないだろう。
俺はリアナの腕の中だったからあまり見えなかったが、思ったよりもこの世界は未発展らしい。
道くらい石で舗装しているかと思ったが、土がそのまま見えている。
ただ、家は予想通りデカかった。
俺の部屋は二階にあるから、二階まではあるのは知っていたが、どうやら我が家は三階建てらしい。
そう、日本基準で言ったら広い。すごく広い。が、この世界ではそうでもないようだ。少し離れたところにあったお隣さんの家も同じような広さだった。
あるいは、ここはある種高級住宅街のようなところなのだろうか。
まぁ、そこらへんは六歳くらいになってから両親に聞こう。
俺の上では、母親と家政婦は少し不安そうな声音でなにごとか話し合っていた。
大体二時間くらい経った頃に、民家とは少し違う造形の丸っこい屋根の建物に二人、俺含め三人は入った。
よくもまぁ俺を抱えて二時間も歩けたものだ。
その見た目に反してリアナもサナも体育会系なのだろうか。汗一つかいていない。
......前世の俺なら途中でギブアップしてるかもしれない。
俺はそこまで体育会系じゃなかったんだ。昔やってた空手も、もうすぐ黒帯だというところで親の仕事の都合で辞めた。それ以来武道はやっていないし、スポーツも体育の授業でやるくらいだ。部活は入らなかった。
診療所なのであろう建物の中は、待合室がなく、入口から直接診察室に繋がっているようなかたちだった。
部屋の中心には机に向かって木の椅子に痩せた男性が座っていた。
そしてリアナと医者らしき男性とが会話を始める。聞き取れた内容を予測で補填するとこんな感じだった。
『どうも、リアナさん。どうされましたか?』
『どうも。私ではなくこの子を診てほしいのです』
『そのお子さんがどうされました?』
『それが、お産の時に泣かなかったんです』
『珍しいですが、そういう子も居ますよ。しかし、その場合は息ができずに死んでしまうのですが......診てみます』
......診るとかはは勘だが、多分間違ってはいないだろう。
そうして俺は脈を取られたりした訳だが、特に異常はなかったらしい。恐らく『なにも異常はありません』という意味であろう事をリアナに伝えると、リアナもその隣のサナもホッと嘆息したが、医者だけは首を捻って聞いたこともない単語を呟いている。
そして最後に医者の呟いていた言葉を聞いたサナが目を細めたことは、誰も気づかなかった。
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お医者様に色々と詳しく聞いてみたが、脈拍はいたって正常、筋肉などのつき具合も正常、異常はところは見当たらない、ということだった。
それよりも、私はお医者様が呟いた言葉が気にかかっていた。
『冥界の子』。
世間には知られていない言葉だ。
この言葉は、死んだはずなのに生き返った子供達のことを指す。
それは極めて少数だが、過去にも存在する。
そしてそれらの『冥界の子』らとされる人々例外なく、何かに名前を残している。
しかし、話によるとその人々は自分の才を過信して冒険に出かけたり禁呪の研究をしては若くして死んでいったらしい。
ただ、彼らが生き返ったというのは事実だと言われており、それが『死者蘇生』の研究の中で一番の近道とされている。
これはごく一部の学者や医者の中でしか共有されていないことのはずだ。
この『ドラグナ領』の中でも辺境の地といってもいい『テーラ地方』で、これを知っている人が私以外にいるとは知らなかった。
私は、ラスティ様がもし『冥界の子』であったなら研究者などから守ろう、早死になんてさせないようにしよう、 と密かに決意を固めた。
次回で一気に時間が飛びます。
あと、毎回更新を6時に早めます。




