新しい生活
僕はそんな大学生活を過ごした後、教員免許を取り中学校の国語の教師になった。それぞれ勤めている学校は違うが、希も国語の教師になり、園崎と遠山さんは数学の教師になった。今でも僕は沙田 希さんとのお付き合いは続いており、大学を卒業したあと4階建てアパートの二階の一室を借りて同居している。
あ、あともう1つ、僕たちが付き合いだしてすぐに、園崎も鷹山さんに告白し、付き合うことになった。
今でもよく、四人で遊びにいったりする。
彼女と同居して一年ほどたった頃だ。
僕はそろそろ彼女と結婚したいと思っていた。
なぜなら園崎と鷹山さんが先月の3月5日に結婚したからだ。
しかし、どこに旅行に行くなどの予定はなく、どうプロポーズするか考えている最中だ。
今日も帰りの電車に揺られながら何かいい考えはないかと考えていた。
家につき、玄関のドアを開けて家に入り閉めた瞬間、パァンと何かの音がした。一瞬身構えたが、それが彼女の手にあるクラッカーの音だったことに気づいて、不思議に思った。
「ん?今日何かあったっけ?」と訪ねると、
「クラッカーでわかるでしょ。遠山くんの誕生日じゃない。」と笑顔で答えた。
あ、そうか今日は4月3日か…。
彼女と付き合ってから毎年お祝いしてくれていたが、最近忙しく今日が何月何日なんて余り考えないようになっていた、
「ありがとう。でも、そう思うと少し寂しいな。」
「なんで?」と少し怒った顔になる。そりゃそうだ、言い方が悪い。
「いや、希に祝ってもらえるのはとても嬉しいよ。でも、生徒には何も祝われなかったなと…。」
「そっか、来年は祝ってもらわないとね。まぁ、今年はその分私が祝ってあげよう!」と、笑顔に戻ってくれた。
「ありがとう。」と笑顔で返し、食卓についた。そこには、1つの小さな丸いイチゴのショートケーキがあった。彼女がケーキナイフで切り分けている。このときにふと思ったのだ。
あぁ、幸せだ…。
そして、無意識に彼女をの姿を見つめ、ふと口が動いた。
「希。僕と結婚してくれないか?」
彼女の手が止まり僕を見つめた。顔が固まっている。
「僕と結婚して欲しい。」ともう一度少し強めに言った。
「渡くんどうしたの、いきなり。」と、まだキョトンとしている。
「いや、希といると幸せだなぁ~と思って。そりゃあ、勿論喧嘩もするけど、すぐに後悔するし。最近どうプロポーズするか迷ってたんだけど、今こういう時間が一番いいかなと僕は思って。」
彼女は「少し、考えさせて。」と答え、ケーキを切っていた手を再び動かし始めた。
「うん。」と笑顔を向けた。
その夜は誕生日を目一杯祝ってもらい、眠りについた。