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彼女に安らかな眠りを  作者: あきのり
5/11

告白

朝起きて時計を見ると朝の9時だった。まず、二度寝してしまわないように布団からでてカーテンを開け、陽の光を浴びながら背伸びをする。コーヒーメーカーでコーヒーをいれて砂糖とミルクを混ぜて飲みながら昨日のことを思い出す。昨日の夜、遠山さんからメールがきたときは驚いた。まさか、一昨日話したあの映画がそんなすぐにみたいほど興味があったなんて。私も見たかったから了承してしまったけど、やっぱり男の人と二人っきりというのは緊張する。一応沙良にも話したけど、

私も用事があるから無理だわ~。デート楽しんできてね!

としか言われなかったし…。

普段から男の人と接しないのに純粋に楽しむだけなんてできるわけがない。と思いつつも携帯でその映画の予告編を見ている。案外そこまで緊張していないのだろうか。

予告編を見終わり、コーヒーを飲み終わったところで、服を決めて着替えた。上下の組み合わせを考えなくてもいい黒色のワンピースにした。

歯磨きをして必要最低限のものだけをバッグにいれて部屋を出た。時計を見ると9時20分になっていた。

ちょうど駅についたらすぐに電車に乗れそうだなと考えながらイヤフォンをつけて、音楽を聴きながら歩き出した。


ちょうど電車が来る直前に切符を買って電車に乗り、二駅移動したときには10時だった。

早く来すぎたな~。と思いながら歩いて15分ほどかかるショッピングモールに向かう。ショッピングモールについて、中に入るとやはり人はいつも通り多い。私はすぐに本屋に行くことにした。私はファッションには無頓着だから、服をみたりしてもあまり時間を潰す材料にはならない。それに比べて本屋では、1時間でも余裕でいられる。勿論新しい本のチェックもするが、今まで目につかなかった本で面白そうなものがあるかなどを見たり、少し立ち読みしたりしているとついつい一冊買ってしまい、座る場所を探してすぐに読み始めてしまうしまうことがよくある。本屋につくと、入り口付近で本を見つめている見覚えのある横顔が目にはいった。遠山さんも既に来ていたようだ。

「おはようございます。」と声をかけると、その本がとても気になって全く私に気づいていなかったらしく、驚いたような顔をしてこっちを見て、「ま、沙田さん!お、おはようございます。」と戸惑ったまま挨拶を返してくれた。驚いた顔のまま固まっているものだからつい笑ってしまう。

約束の時間より早く来たから驚いているのかもしれない。

「すいません。余りに驚いているので。その本が気になってたんですか?」と聞くとようやく遠山さんは笑顔に戻った。

「まだ一時間も早いのでさすがに驚きますよ。はい、ちょっと面白そうだなと思って。」

やはり気になっていたんだと思いながらその本をみるとつい最近買って、読み終えたばかりの本だった。

「それ私最近読み終えたので、お貸ししますよ。」と言うと、「いいんですか?じゃあ、楽しみにとっておきます。」とますます笑顔になる。

いつもだ。本の話しになるとすぐ笑顔になる。本当に本を読むのが好きなのだなと思う。

「沙田さん、お腹すいてますか?チケットは先に買っておいたので、ご飯行きませんか?」

「はい!行きます!あ、でも先に代金お支払しておきますね。」

「あ、大丈夫ですよ。」

やっぱりか。奢られるのはあまり好きじゃない。

「いえ、そういうことはきちんとしておきたいので払います。」と言うと、

「そうですか。分かりました。」

と、意外にすんなり引いてくれて、何回も断わるはめにならなくて楽だった。お金を払ったあと、どの店に食べに行くかを決めるため、ショッピングモールのマップの前に移動した。

飲食店を表すピンク色が並んでいる一階のレストラン街を見ていると遠山さんが「何がいいですか?」と尋ねてきた。いつも特に食べたいものはあまりないので出来れば決めてもらいたい。

「私は特にこれが食べたいと言うのはあまりないので、遠山さんが決めてくれて大丈夫ですよ。」

「分かりました。えーっと、じゃあここの和食屋というのはどうでしょう。」と指を指す。

「いいですね。じゃあそこにしましょう。」

すぐに食べに行くお店が決まって良かった。そう思いながらその店に行くと、ぎりぎり席が空いていてすぐに座ることができた。

二人揃ってぶりの照り焼きの定食を頼んで、相変わらず本の話やこれからみる映画のことなどを話したりした。

食べ終えた後はまだ上映時間まで余裕があったので、ゲームセンターに行って、一緒にレースゲームやシューティングゲーム等をして時間を潰した。勝負は丁度五分五分という感じで双方負けたら悔しがって、勝ったら喜んだ。そして、1時55分頃に、映画館でポップコーンと飲み物を別々に買ってから、中段の見やすい席に並んで座った。


「おもしろかったですね!片想いから恋心が生まれて、恋心が愛になる。そして、二人で愛し合っていきて行く。私もそんな人に出逢いたいです。」

「いいですね。僕もそう思います。」

二人とも苦笑いで見つめあった。

映画館を出て感想を言い合った。

それからは、ショッピングモールで30分ほどほどブラブラしてから、5時に回転寿司屋で早めの晩ごはんを済ませた。お会計は割り勘にしようといったが、僕の方が多く食べているから払う。と言って遠山さんが引かなかったので、仕方なく折れて、ありがたくお言葉に甘えることにした。外に出ると、冬を感じさせる寒さが増していて体温を奪ってきた。手が冷えて無意識に手擦り合わせる。

ふと、目の前に手袋が出される。

「これどうぞ。」と言われたが、手のひらを相手に向ける。

「いえいえ、いいですよ。遠山さんの手が冷えますし。」

「僕は大丈夫ですよ。ポケットに手を突っ込んでおけば大丈夫です。」と笑顔で言ってくれる。なぜそんなに優しくしてくれるのか不思議に思いながら、寒さに耐えられなくてありがたく貸してもらうことにして、手袋をはめた。

さっきまではめていた遠山さんの温もりが手袋に残っていてすぐに手が暖かくなってきた。

「ありがとうございます。」とお礼をお辞儀をして歩き出す。

遠山さんは駅で私とは反対方向行きの電車に乗るようなので、家も外灯も多くはない道を15分ほど歩いた先にある駅に向かって歩きだした。

10分ほど歩いたとき、朝は気づかなかったものが、明るい光を放っているのを視界の端に捉えた。その場所を見ると、空き地に作られていたイルミネーションだった。いろとりどりな、たくさんの小さな光で輝いているのが見えた。

どうしても近くでゆっくり見たかったので、「すいません。私あそこによりたいので、先に帰っていただいていてもかまいません。」と言うと。

遠山さんが私の指差した方向をみて、目を輝かせた。

「いいですね!僕も行きたいです!」と遠山さんも行きたがってくれたので、二人で見に行くことになった。ついてみると、人が全くいなかった。だが、それが不思議なほどとてもきれいだった。

トンネルで作られたコースの縁には、トナカイや雪だるまなどの冬の代名詞が見られるようになっていた。

ゆっくりと歩きながら右に左にと首を動かしていると、「今日は楽しかったですか?」と遠山さんが同じスピードで歩きながら言った。

「はい!とても!」と返す。

「それは良かったです。」

チラッと横目で遠山さんの横顔を見ると、微笑んでいた。視線を前に向けてそのまま並んでゆっくり歩く。

「好きです。」

ビックリした私が立ち止まると、遠山さんも立ち止まった。私が遠山さんの顔を見ると、遠山さんも私を見た。

「もしよければ僕と付き合っていただけませんか?」と穏やかな表情で呟くようにいった。

こんな幸せな雰囲気に包まれているときに告白するのは反則だと思ったが、冷静に返事をしなければ。

「はい。」それが私の答えだった。半年遠山さんたちと出掛けて、遠山さんの優しさや人柄に触れているうちに、私も遠山さんのことが気になっていた。遠山さんのことをもっと知りたいと思った。それにおそらく、好きだと初めて言われたことが嬉しかったのだろうと思う。

「本当にいいんですか?」と、もう一度確認してくれる。

「はい。これからもお願いします。」と笑顔で軽く頭を下げた。

遠山さんが満面の笑みになる。

「こちらこそお願いします!」と深々と礼をされて、笑ってしまった。

それから、光のトンネルを抜け、駅に向かった。

駅につくともう7時30分だった。二人でさっきまで見とれていたイルミネーションの話や、相変わらず本の話をしながら電車を待った。

私の電車が先に来たので

じゃあ、また大学で。と言って別れた。

電車の中はほとんど人がいなかったので座り、揺られている間に沙良にメールで報告をした。すぐに返信が返ってきて、

まさか、本当にデートになっちゃうとはね~(笑)おめでとう!

と祝ってくれた。

その後、家についてお風呂にゆっくり浸かって出てくると、9時だった。遠山さんから

今日は本当に楽しかったです。またどこかに行きましょう!

とメールが来ていたので、

私もです!ありがとうございました。是非!また明日、おやすみなさい。

と返信をした。すぐに

また明日!おやすみなさい。

と返信がきたのを確認した後で寝ようと布団に入ったが、11時になっても興奮が収まらず眠れなかった。このままでは明日の朝9時に集合の約束をした友達との待ち合わせに寝坊してしまう思い、リラックスしようとホットココアを作って飲み、体を落ち着かせると、ようやく眠りにつけた。

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