謎の少年との出会い
私は燐ある集落に産まれた。
その集落には言い伝えがある。
村の奥の山には人狼が住んでいると。
私には両親がいない。両親は私を捨てたから。
村人はそんな私を可愛がって大切に育ててくれた。
欲しい物はくれるし、なによりも右目の存在を怖がらないで受け入れてくれた。
「んっ~。おはよう、村の皆さん♪」
集落では有名な私。人数が少ないのもあるらしい。
『朝から元気だねぇ。』
「久しぶりにゆっくり休めて。今日は晴天ね。」
『あ、洗濯物はこれだけでいいのね?』
「はい。ありがとうございます。」
これが変わらない私の日常。
今日は久々に遠出しようかな。
その時耳に止まってきた話。
『嘘だろ?人狼説なんてさ。』
『昔からいるらしいじゃないの?人狼が。怖いわねぇ。』
人狼の話をしている人がいた。
この集落には人狼がいるのかな?と思いながら集落を出る。
「もう、春なんだなぁ。草の匂い…。」
晴天の温かさにボーッとしてしまう。
春って出会いと別れの季節だよね?
(ドン)
あれ?体が…。
「キャッ!」
地面に叩き付けられた衝撃で声が漏れる。
痛い。
『すいません。怪我は?』
「っ、大丈夫ですよ!こちらこそすいません。あっ…。」
見とれてしまった。見慣れない銀髪の少年。
『ほら。』
手を貸してもらい起き上がる。
『君、綺麗な右目だね。赤色の瞳って。』
見られた…秘密にしていたのに。
そうか、転んだ衝撃で前髪が乱れたのか。
「あっ…この目は秘密に…。」
『右目が赤って凄いね。俺は銀。君の名前は?』
話聞いてないよね?
でも、この気持ちは何?
「燐です。」
『燐かぁ。珍しい名前だなぁ。』
前髪を整える。この銀って子無邪気過ぎるような。
「あの、私の住んでる集落の人ではないですよね?銀髪何ていませんから。」
『そうだよ。初めて出会ったしな。』
「ですよね…。何処に住んで?」
『言えないな?あ、俺帰る。』
と言い残し何処かに走って行く。
家に帰った後もあの少年の事が頭に浮かぶ。
「あぁ!何考えているのよ!」
そう、私は一目惚れをしてしまったから。