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迷宮〔あな〕のせんたく屋さん (童話バージョン)  作者: 弥竹 八
子きつねタタ  〔スライム・ワールド番外編〕  
18/18

空飛ぶお皿

 真夜中のおもちパーティーは大盛況でした。

 もじょもじょをはじめ、集まってきた変なのたちが、どこからか色々用意してくれたのです。

 大きなテーブルや手桶。

 打ち粉をはじめ、きなこもあんこも砂糖醤油も。

 のりに大根おろし、納豆。チーズやいくら、おろしたワサビまでありました。 

 チェロもピアノもタタも、一生懸命おもちを丸めます。

 とりあえず、「夜の人たち」と呼ぶことにした変なのたちも、すすんでおもちを配ったり色々お手伝いしてくれました。

 おかげで少し手の空いたチェロは、元の大きさに戻って、「フーっ」って感じで座ってるカマちゃんの中に水を張ってあげました。


「おつかれさま~」


 カマちゃんはニッコリ笑いました。


 そのあとは、みんなでおもちを丸めて、わいわいガヤガヤ。

 大きなドラゴンは口からチョロチョロと火を噴いておもちを焼いてくれました。

 おもちはみんなに行きわたり、みんなニコニコ嬉しそう。

 チェロもピアノもタタもお腹いっぱい食べました。

 そこで、チェロは昨日と同じように聞いてみようとしました。

 でもタタが一歩前に出ると、「ぼくが聞きます」と緊張した顔で言います。


「白い粒の入った小さな袋はしりませんかー?」

「春の探しかたしりませんかー?」


 昨日来ていた変なのたちがあらかじめ伝えてくれたのでしょう、広場中からペチャクチャ、ワオワオ、キーキーと不思議な声でなにか一杯言われました。ですが・・・。


「みんな。ごめんね知らないってゆってる・・・」


「そっかあ」


 ピアノが通訳してくれましたが、チェロもピアノも残念そうに肩を落としました。

 タタはもっとしゅ~んとしています。


「難儀をしておるようだな狐の子よ。だがおぬしも御使いならば諦めてはならんぞ。最後まで諦めねば必ずその使命も果たせよう。おぬしが年を送る様、我も楽しみにまっていよう」


 ドラゴンはタタにぐうんと顔を近づけてそういうと、大きな顔で二コリと笑いました。

 そして手を合わせると、「ごちそうさまでした」と頭を下げていきました。

 ドラゴンに続き、変なのたちもそれぞれがチェロたちの前にやってきてはペコリと頭を下げてチョコチョコと帰っていきます。

 やがて広場にシーンと静けさが戻ってくると、チェロは元気にピアノとタタに笑いかけました。


「おいしかったね!」


「うん! ピャーノはライコンおろしのがおいしかった!」


「ぼくはきなこおもちがおいしかったな・・・あれ?」


 タタのお耳がピクンと動きました。ゆっくりと空を見上げます。


「ろーしたの?」


「なんだろ? あれ・・・」


 チェロもピアノもタタが指をさす方に目を向けました。

 今夜もキレイに星が出ていますが・・・そのうちのひとつの光がだんだん大きくなって見えるのです。

 ジッと見てるとその光はどんどんこっちに近づいているようでした。光る点だったものが横に平ぺったく見え始めたかと思ったら、あっという間に広場の上まで飛んできたのです。

 みんな目をパチパチしてポカンと口を開けました。


「お皿?」


「れっかいお皿らね~」


 光るお皿がクルクルと回りながら、夜空に浮かんでいました。 

 するとそのお皿から静かな音楽が流れ始め、フワフワと雪のような光の粒が降ってきます。

 3人はポカンと口を開けたままその様子を見ていましたが、そうしてる間に、お皿の底の部分がシュウィーンと音を立てて開き、そこから誰かが降りてきました。


「うしゃぎしゃんら」

「うん」

「うさぎさん・・・」


―― 天女のうさぎさん? 天女うさぎ?


 前に絵本で読んだことがある天女さまのようなヒラヒラした羽衣をまとったうさぎたちです。

 街にも、うさぎの獣人さんたちはいますがそうゆう人たちとも違って、体はチェロと同じくらいの大きさですが、本当にそのままうさぎの姿をしています。


「こんばんは」


 先頭を歩いてきた一際きれいな着物のうさぎさんがペコリと頭を下げると、後ろに並んでいたうさぎさんたちもピッタリ同じタイミングで頭を下げました。


「こんばんは!」

「こんばんはー!」

「こんばんは・・・」 


 チェロたちはなんだかバラバラになってしまいましたが、それでも元気よく頭を下げると、先頭のうさぎさんはニッコリ笑いました。

 背丈から一瞬同じ年くらいの子どもかと思ったチェロでしたが、その笑顔を見て大人のうさぎなんだと思いました。


「突然、申し訳ございません。我々は月に仕えるウサギ衆。わたしは総括代理で参りましたピヨン子と申します」


「そーかつだいり」がよくわかりませんでしたが、たぶんエライ人なのでしょう。


「えーと、わたしはチェロです。この子はピアノちゃん、こっちの子はキツネのタタちゃんです」


「タタちゃんは、ピャーノのおとーとれす!」


 そのセリフに、タタはちょこんと首を傾げました。


「ぼくは弟なの?」


「そーらよ。ピャーノおねーちゃんって呼ぶんらよ」


 ピアノは楽しそう肩をすぼめて、ウフフとわらいました。






 ニコニコ笑って見ていたピヨン子さんは、「よろしくお願いいたします」とまた丁寧に頭を下げると、チェロたちの前にスッとひざまずきました。


「実はお願いしたいことがあって参ったのです。しばらくの間で結構です。そのお釜をお貸し願えませんでしょうか?」


「お菓子?」


 ピアノが、「ん?」っと首をかしげます。


「お菓子じゃないよ。カマちゃんを貸してくださいっていったの」


「そ~なんら~。なんれ~?」


 ピアノの問いに答えたピヨン子さんによれば、ちょっと大変そうな話でした。

 ピヨン子さんたちウサギ衆は、月でお餅をつくのが仕事で、ついたお餅をさっきまでいた、「夜の人たち」に配るんだそうです。


「ところが大事な杵が、流れ星に当たってどこかへ跳ね飛ばされてしまったのです」


 だからお餅がつけなくて困っているというのです。

 しかも、新年には神様たちにも献上しなくてはならなくて、慌てて新しい杵を用意したけれど、まだ月の霊力になじめず思った品質に届かないのだそうです。


「さきほど竜が教えにきてくださって、こちらのお釜のことを知りました。このお釜で作ったお餅は我々のついたものと同じくらいいいお餅だったとか・・・なのでどうかしばらくそのお釜を我々にお貸し願えませんでしょうか? なにとぞ」


 ピヨン子さんたちは、深々と頭を下げます。

 うさぎとはいえ大人の人にこんな真剣にお願いをされたことのなかったチェロは慌ててピアノとタタとカマちゃんを見ましたが、ふたりともなんだかキョトンとしてます。


 もしみんながOKしたところで、持ち主のマシロさんに聞いてみないといけません。明日もう一度マシロさんのところへいって聞いてみようかと思ったところ、カマちゃんがテコテコと寄ってきてチェロのパジャマの裾をチョイチョイと引っ張りました。

 そしてニッコリ笑います。


「カマちゃんは、いいよ~っていってるみたいだけど、みんなそれでいいかな?」


「う~ん・・・。じゃああしたからはおもちパーティれきなくなるね~・・・う~ん」


 ピアノは腕を組んで残念そうにしています。


「でも・・・困ってるなら貸してもいいと思うよ・・・ぼくもいろんな人にたすけてもらったから・・・明日マシロさまにおはなしするから・・・」


 まだうなってるピアノにタタは真面目な顔で言いました。

 そして、「おねがいピアノおねーちゃん」というと、ピアノは、「ハッ!」と目も口も開きます。


「そーらった。ピャーノはおねえちゃんらった! いいよ~!」


 ピアノはニヒ~っと歯を見せて笑いました。


「あ、そーら。そしたらね、タタちゃんのお手伝いもしてほしいの!」


「あ!!」


 チェロもタタも同時に気が付きました。

 タタがいつものように、「小さな袋に入った白い粒」、「春の探し方」について質問すると、ピヨン子さんは真っ赤な目を大きく開いて驚きました。


「なんと、御使い様でいらっしゃいましたか。大変な時期に無理を申しまして誠に申し訳ありません」


 でもやっぱり、「小さな袋に入った白い粒」はわからないといいます。


「ですが、春を探しておられるとなれば、冬の女王様にお伺いを立てればなにかわかるかも知れません」


「ふゆのじょーおーさま?」


「はい、世界の果てにある、季節の塔というところにいらっしゃるお方です」


 そしてピヨン子さんは、空に浮かぶお皿から、大きな地図と大きな白くて丸い石を持ってこさせると、チェロたちの前に広げて見せました。

 みんな地図の見方がよくわかりませんでしたが、ピヨン子さんは今いるところと季節の塔に印をつけ、石と一緒にタタに手渡しました。

 

「この船で送らせていただきたいところですが、あいにく我々も神族の一端に名を連ねる身。これ以上お助けすることができません。その石は月光石という石で下界でも取れるものですが、これを手にしっかり念じれば神々に声が届くとされています。どうぞお持ちください」


 そういうとピヨン子さんたちは、改めて深々と頭を下げ、カマちゃんを手に空のお皿の中に吸い込まれていきました。


「ばいば~い!」


 みんなで手を振り、光るお皿が見えなくなるまで見送りました。

 そしてみんなはニコニコ笑いながら小さな声で後片付けをすると、そっとベッドに戻りました。

 タタは、月光石を胸にギュッと抱きしめて、一生懸命お祈りしました。


―― ふゆのじょうおうさま、ふゆのじょうおうさま。どうかお話きいてください。春のさがしかたおしえてください・・・。


 そして深い眠りに落ちていきました。




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