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プロローグ


*始めに

これは極めて平凡たる少年少女のお話です。所謂戦闘描写、深い所で繰り広げられる心理戦、格好いいおっさん成分等が欲しい方は他の作家様の小説をお読みになることを推奨します。私個人としては非常に好きですがこれはそういう物ではありませんので。


分かりやすい物からなんぞこれと言う物まで多種多様な小ネタが飛び交います。忌避する方はバックすることを推奨します。これでもかというくらいネタ塗れになりますので。


最後かななりますが私はあまり物書きの経験がある方ではありません。誤字脱字や読みにくくなることも多々あるかと思われます。もし気になった点がありましたら感想欄もしくはコメント欄に残して頂ければ何らかの形で対応致します。感想も大歓迎です。気軽に書き残して貰えれば幸いです。


 人生の浪費とはどんなものかと、唐突に出雲大地は呟いた。

「ふふ、面白いことでも思いついた?」

「まあ、それなりにはな」

 シニカルな笑みを浮かべる神庭(かんば)林檎に苦笑を返し、大地は窓の外に目を向ける。学校の外れに存在する文芸部部室。教師から隔離されたとの噂さえあるこの場所で、大地はいつものように部長である林檎と駄弁っていた。

「さて、今日は何をする? また昨日みたいにゲームでもする?」

「麻雀ならいいぞ。偶には運が介入するゲームもいいだろ」

「麻雀、ね。別にいいけど……そもそも面子がいないけど、どうするの?」

 そうだった、と今更思い出したかのように呟いて、大地は肩を落とす。この場所には二人しかいない。二人でやるゲームには相応しくなかったなと息を吐く彼を他所に、少女は楽しそうに微笑を浮かべる。

「麻雀、ね。大地くんはそういうゲームが好きなの。意外だわ」

「たいして好きってわけでもないぞ。俺は単に、絶対に負ける勝負はしたくないだけだ」

「あら、やる前から敗北宣言だなんて、大地くんらしくないわよ? いつも言ってるじゃない、結果は過程のあとにしか存在しないって」

「ラプラスの悪魔を飼ってそうな奴にだけは突っ込まれたくなかったな」

「それって私のこと? 褒めてくれるのは嬉しいけどまた随分と過大評価ね」

「これでも過小評価だ。あと褒めてない」

 あら残念、と笑う林檎を横目で睨む。チェス、囲碁のようなゲームから、レースゲーム、対戦格闘ゲーム、果てはシューティングのスコアアタックに至るまで、大地は一度として林檎に勝利したことはなかった。純粋な実力のみが勝敗を左右するゲームを彼女としてはならない。それが最も自信のあった格闘ゲームにおいて何もすることが出来ずハメ殺されたときに抱いた、唯一絶対の結論だった。

「しかし麻雀、ね。一部の界隈ではこの世で最も完成されていると言われているゲーム。それをどう思うかは個人の自由だけど、私はそのフレーズを知ったときは良く言った物だと感動したものだわ」

「麻雀は、運と実力が上手いこと混ざり合っている、って話か」

「混ざり合っている、というよりも干渉しあっているって言ったほうが正しいかもね。平等と公平、その相反する要素をどちらとも傾くことなく振り分けたゲーム。……こらそこ、訳が分からないって顔をしない!」

無意識のうちに出てしまった困惑の表情を咎め、林檎は楽しそうに吐息を漏らす。学校(外界)から乖離した部室(世界)の中心、少女は椅子に座り悠然と笑う。

「平等を平面、公平を比例と考えると分かりやすいわ。平等は全ての対象を等しく扱う、つまり各人の個性を否定する。さっきのゲームの話で言えば運ゲーね。全員に等しく勝利の機会が与えられる代わりに、全員に何も行わせない。公平はその逆、対象を対象として的確に扱うが故少なからず格差が出てしまう。当然でしょう、幾らゲーム自体が公平に作られていたとしても、行うプレイヤーの技量に差が出てしまうのだから」

 出来の悪い生徒に物を教えるかのように言葉を連ねる少女に思わず頷きながら、大地は内心で慣れた物だと苦笑する。文芸部に入部して僅か数か月だが、毎日のように足を運んでいればこうもなるだろう。なんせ、毎日のようにこういう話になるのだから。

「だから――――大地くん、話聞いてた?」

「……当たり前だろ」

「嘘ね。顔に聞いてませんでしたって書いてあるもの。全く、嘘を吐くのならもう少し上手いこと嘘をつきなさい。そうすれば騙されてあげるから」

 わざとらしく溜息を吐く林檎に頭を下げ、満足したらしい彼女が鷹揚に頷く。

「一応話も纏まったし、話題を戻しましょ。ねえ大地くん、今日は何をして遊ぼうかしら?」

 悪戯っぽく笑いながらゲームソフトを手に笑う少女を尻目に、少年はあからさまに溜息を吐いた。



 これが出雲大地の放課後。

 一人の少女が満足か飽きるまで付き合い続けるのが、彼のかけがえのない日常だった。



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