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作者短編集  作者: 明夜
9/14

テンプレとは正反対の異世界転移

チュンチュン


鳥の声で起きる。起き上がり硬直する。俺の部屋がまったく別物になっていた。

よくファンタジーのアニメやゲームなんかに出てくる宿の一室ににている。


「一体どういうことだ?」


俺がそう呟いた直後まるでそれが合図だったかのように部屋のドアが開く。そこから40歳くらいのホウキと雑巾を持ったオバサンが入ってくる。


「あのここは何処なんですか?」


俺がそう聞くとオバサンは


「djsksjksksksksdっkssjskajks?」


......何やら俺に向かって聞いているのは分かる。が何を言いたいのかまるで分からない。モンゴル語とか初めて聞いたらこんな感じだろうか。これでは俺の言葉が伝わっているのかもわからない。



どうやらオバサンは俺に言葉が通じてないことがわかったそうだ。そのまま動くなみたいなジェスチャーをしたあと部屋から出ていく。


「ここはどこだ?そもそもここは日本なのか?」


恐らくここが日本ならばさっきのオバサンは日本語が分かる人を呼びにいったのだろうと思いその場で待機する。


しばらくするとオバサンは戻ってきた。......鎧を来た男というオマケつきで。


(なんで鎧!?鎧なんて重いだけじゃないのか!?)


そんなことを考えていたら鎧の人が


「お前、俺、ついてくる」


と日本語で言ったあとそのまま部屋から出ていってしまった。その兵士についていくのは不安だが折角日本語が話せるやつに会えたのでそのままついていくことにする。


宿を出て俺は驚愕した。そこは現代日本とはかけはなれた光景が並んでいた。二足歩行するトカゲのような奴や、頭に角がはえた鬼っぽいやつ、果ては悪魔のような奴までいる。が、全員何を話しているのかさっぱりわからない。


そのまま兵士に連れられていくと一際大きな建物にたどり着いた。兵士はそこに入って行くのでついていくとなかでは腰に様々武器を下げた男たちがたむろしていた。思わずビビる俺。仕方ないじゃないか。山田哲(やまださとし)20歳今までの人生で模擬刀なんて触ったこともないもやしっこである。趣味は将棋ていうかそれで食ってる。


兵士はカウンターの中に入ると俺の方を見たあとついてこいとしめす。しかたなくついていく。こんなところにいるのも嫌だし。

それにしても相手がなんて言ってるか本当に分からない状況でその言葉で回りをかこまれると、気分が悪くなるな。


カウンターの奥にある部屋の前で兵士が待っていた。入れとジェスチャーされる。

言われるがままに入るとそこには一人の男が座っていた。精悍な顔つきにガッチリした体。いかにも強そうな雰囲気を放っている。


「一応確認しておく。お主は地球人か?」


「そうですけど、ここが地球じゃないみたいな言い方ですね」


「残念だがここは地球ではない。エウロスという国だ」


「.......面白い冗談ですね」


「冗談ではない。何故かエイダにはお主のように別の世界の人間がくることがある。だからこその対応の速さだろう」


確かに俺がオバサンに見つかってから約30分。かなり速い対応だろう。


「わかりました。取り敢えずここが異世界だとして地球に戻る方法はありますか?」


「残念ながらまだ発見されてない。だからお主にはしばらくこの世界で過ごしてもらうことになる。安心しろ。生活は国が保証する。まあ一つ仕事はしてもらうがな」


「仕事というのは?」


「その前にこの世界について説明しよう。この世界ではお主たちの世界でいうところの魔族や獣人が人間と共存している。そして人間も魔族も獣人も種族につき一つの国が治めている。人間の場合はエウロスがそれにあたる。戦争などは何もない。たまに魔物の被害があるがそれも冒険者でカバーできる。それでだな人間、魔族、獣人はそれぞれ交易したりしているんだが、それぞれのトップは仲が悪い。勿論そのせいで戦争に発展するとかではない。ただ個人的に仲が悪い」


「はあ、それはまたなんでですか?」


「将棋だ」


「は?」


「昔君のように日本から来た奴がいてなソイツはこっちにくるときに何故か将棋盤と駒をもってきていてな。それがこちらの世界で大ヒットした。それぞれの種族の王も将棋には熱中している」


「それは驚きですがそれで?」


「ここでは1月に一回それぞれの王が順場に他の国の王城に集まり今後の交易についてなどを話あうんだがその会議が終わると毎回王同士で将棋の試合をやるのだ。そして言ってはなんだが我らが人間の王エウロス100世は他の二人の王よりも弱くてな。勿論人間のなかではかなり強い部類だ。だが敵はそれ以上で毎回辛酸を舐めさせられているのだ。そのせいで王たちの個人関係は少々悪くてな。王の実力が上がればいいのだが」


「つまり自分はエウロス陛下に将棋を教えれば宜しいんですね」


「ああそうだがお主将棋は打てるのか?」


「安心して下さい。これでも地球では将棋のプロでしたから」


「それはありがたい!!じゃあ期間は地球に帰る方法が見つかるまで、報酬は身の安全と保証でいいな?」


「はいあとある程度の行動の自由もお願いします」


「その程度なら簡単だ。早速王に会いに行くぞ」





その後王に会い将棋を教えた。なんでも王や一定以上の地位にいる人物は日本語が堪能らしい。恐らく今回ような事態のためだろう。王は弱いプロ程度の実力は持っていた。そして向かえた定期会議の後の将棋の対局でまずは獣人の王に勝てた。その後も何回も俺と対局してとうとう魔族の王にも勝てるようになった。三人の王の実力が横並びになった後は王子に将棋を教えることになった。なかなか充実した生活だ。


~60年後~


ワシは今ベッドに寝ている。もう自分一人では起き上がることも出来ない。老いには勝てんということか。もうワシも長くはないだろう。いつ死んでもおかしくはない。


「哲よ大丈夫か?」


その声はかつては王子ではあり今では王であるエウロス101世の言葉だ。


「エウロス陛下ご心配をおかけして申し訳ございません。貴方様よりも先に逝く不忠をお許しください」


「なにを言うか哲。お前とワシの仲ではないか。それに言ったであろう。ワシとお前は同い年おまけにお前はワシの将棋の師ではないか。二人きりの時はそのような他人行儀はやめよ」


「ワシなどにはもったいないお言葉ですが最後ぐらい甘えさせて頂きます」


「結局ワシは一度もお前には勝てなかったな」


「当たり前です。ワシは王の師なんですぞ。師は常に弟子が追い付くことの出来ない場所にいるものなのです」


「だがこれではもうお前の背中を追うことすらできないではないか」


「そんなことはありません。天に昇ったらまた二人で打ち合いましょう。そしたら好きなだけできますよ」


「そうだな。哲よワシが天に昇るまで待っていてくれるか?」


「当たり前じゃないですか。どれだけでも待ちますよ。ですから王はのんびりと昇ってきて下さい」


「勿論だ。おまえが我慢できなくなるくらい時間をかけて昇るぞ」


「エイダに転移してはや幾年日本に帰ることは出来なかったが毎日好きな将棋がうててワシは満足でした。では王よワシは一足先に行きますね」


その言葉を最後にワシの意識は混濁していく。これが死ぬということなのだろう。不思議と恐怖はない。消え行く意識のなかワシはこう思った


「早くまた将棋を打ちたい」


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