幼馴染
「ほら、起きなよ!!」
「あと、五分・・・」
「それ五分前も聞いた!!起きないなら僕にも考えがあるよ!」
起こしている奴はそういうと・・・布団を剥ぐという暴挙に及んだ。
「寒い!!」
思わず叫ぶとそいつは勝ち誇ったように、
「さっさと起きないからだよ」
と言った。
「なんてことをするんだ、楓」
こいつは幼馴染の楓。親同士が仲良かったこともあり幼稚園のころからの腐れ縁。
「毎日リョウを起こす僕の身にもなってよね」
リョウというのはあだ名だ。本名のもじりである。
「まったく。毎日毎日一体何時まで起きてるんだか・・・」
その後も説教が続きそうだったので
「わかったよ。ところで今から着替えるけど見てたいの?」
と聞くと楓は顔を真っ赤にして慌てて部屋から出て行く。
着替え終わってリビングに行くと母さんと楓の会話が聞こえてきた。
「ありがとうね、楓ちゃん」
「いえ、いつものことですから。それより僕的にはちゃん付けをやめてほしいんですけど・・・」
「べつにいいじゃない」
楓は小さいころから母さんにちゃん付けで呼ばれている。やめてほしいようだが母さんが聞く様子はない。
「ほらリョウさっさとご飯食べちゃって」
「はーい」
「もう。本当にあんたは楓ちゃんがいなくなったどうするつもりなの?」
楓がいなくなる?
「なに?楓引越しでもするの?」
「そうじゃないわよ。楓ちゃんだって年頃なんだから恋人とか出来たらあんたにばっか構ってられないでしょう」
楓に恋人。あながちありえない話ではない。楓は背は低いが顔立ちは可愛い。それに誰にでも別け隔てなく接して、優しい。背が低いのを本人は気にしているようだが。そんなわけで当然楓はもてる。
「どうにかするよ」
ご飯を食べ終わったので適当にそう言ってカバンを手に家をでる。
「やっと来た」
玄関を出るといつものように楓が待っていた。
「べつにまっていなくいいのに」
「いいよ。好きでやってるんだから」
こんな寒い日に酔狂だな。
「楓」
「なに?」
学校での道すがら母さんが言っていたことが気になり聞いてみる。こうして並んで歩くと楓が気にしている背の差が明確にわかる。
「楓ってやっぱり告白とかされるのか?」
「告白?わりとされるよ」
ふーん
「なになに?もしかして嫉妬しちゃった?」
「誰に?」
「僕に?」
「なんで疑問系?」
「さあ?、、、僕に恋人ができたらどうする?」
「うーん、取り合えず目覚まし時計を買うかな」
「そういうことじゃないんだけど」
アホなことを話しているうちに学校につく。
上靴に履き替えて教室に向かう。
「じゃあね」
楓とはクラスは別なのでここで別れる。
「じゃあね、ってスカート折れてる」
言われて初めて気付いてスカートを直す。
自分のクラスに戻る楓を見る。
たまにふと思うことがある。何故自分のようにがさつなのが女であんなに華奢で可愛い顔をした楓が男なのかと。頭を振って思考をとめる。
「良子ちゃんおはよう」
同じクラスの子から挨拶をされる。こうしてまた一日が始まった。
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