タイムマシン
今日とうとう博士から例のものが完成したと報告があった。その知らせを聞いた私は大急ぎで博士のもとに向かった。
「博士!あれが完成したというのは本当だろうな!!」
博士の自宅兼研究所に着くなり私はノックもせずにドアを開けて博士に問いただした。博士はいつもドアの鍵を閉めない。普段だったら小言の一つでも言うところだったが今はそれどころではない。
「おお君か。あいかわらず来るのが早いな」
博士はその日もよれよれの白衣姿だった。何回言っても博士は着替えようとしない。
おっと今はそれどころではない。二回も同じことを思うあたり私も相当興奮しているらしい。
「そんなことよりもあれは、タイムマシンは完成したのか!」
そう、私がこんなにも興奮している理由それはタイムマシンが完成したという知らせを受けたからだ。
「本当だよ」
「おお...」
感極まって私は何も言えなくなってしまった。
私が過去に戻りたいと思ったのは何時からだろうか。きっと誰もが一度は想像するだろう。あのときに戻れたらと。私が他の人と違うところはその想像を実現するだけの財力があったことだろう。勿論彼という優秀な科学者を知っていたことも違いの一つだろう。
「早速動かしていいかね?」
それこそは今すぐにタイムマシンに飛び付かんばかりの勢いで聞く。
「構わないが一つ注意事項がある」
「それはなんだ?」
過去に行けるのだ。一つや二つの注意事項など屁でもない。
「このタイムマシンは例外なく過去に戻す。それは装置を動かした人物も例外ではないのだよ」
「年齢も戻るということではないのか?」
「それは勿論だがこのタイムマシンは体の年齢を戻すだけでなく記憶も戻す」
「えっ?ということは...」
「うむ。過去に戻ったことも忘れてしまい未来はまったく変わらないだろうな」
数秒後、研究所に私の慟哭が響いた。