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05(最終話) 無(ゼロ)へ



アルファ国国王、エストックは数名の部下を従え

気晴らしの乗馬を楽しんでいた。


国王:「近年は国民を脅かす賊どもが

    目に見えて減ったのう」


近衛兵A:「は、これも陛下の国政の賜物でございます。

      臣民一同、陛下に深く感謝しております」


国王:「ハッハッハ、そうであろう」


国王一行は乗馬を存分に楽しみ

王宮への帰途につく途中で馬を止めた。



全身真っ黒な鎧を着た怪しげな者が

道の真ん中を歩いていたのだ。


近衛兵A:「そこの者、道をあけよ。国王陛下のお通りであるぞ」


その者は立ち止まると、一言呟いた。「どけ」


近衛兵A:「な、貴様、国王陛下に向かって何たる言い草!」


黒い鎧の者は、今度は不気味に響く声で

何かを口走った。


”ダークボール”


直径1メートルほどの真っ黒な球が

出現し、一行に突っ込んだ。


ドーン。ダークボールの爆発音と共に砂煙が上がった。


近衛兵D:「ハッ!?」


一人の近衛兵が意識を取り戻し、辺りを見回した。

少し離れた場所に、己の君主が

横たわっているのが見えた。


近衛兵D:「陛下!」


右膝に鋭い痛みが走る。


近衛兵は、右足を引きずりながら国王に近づいた。

既に国王の息はなく、その体は冷たくなっていた。

国王一行の生存者は、近衛兵一人だけだった。


近衛兵D:「ああ、何ということだ・・・」


王宮では、前国王と従者数名の葬式

及び新国王の就任式が速やかに執り行われた。


新国王:「亡き先王の後を次ぎ、この国の新たな国王となったカタルだ」

    「父君に比べ、まだまだ未熟者の私だが

     優秀な家臣達の力を借り、精一杯、国政に取り組む所存である」


    「だが、その前に成さねばならぬことがある」

    「先王を亡き者にした怪物、ダークナイトの討伐だ」


    「これを討ち取らぬ限り、この国に真の平和は訪れぬ!」

    「勇猛な兵士の諸君よ、どうか私に力を貸してくれ」

    「野蛮な怪物の手から、王国の誇りと平和を勝ち取るのだ!」


王宮に集まっていた数千人の兵士達から

一斉に歓声があがった。


一方のダークナイトは、枯れ木が疎らに生えた

殺風景な土地を歩いていた。


どこからか、馬の蹄の音が聞こえてきた。

まもなく、一頭の馬に乗った兵士が現れ、声をかけてきた。


兵士:「貴様がダークナイトだな?」


ダークナイト:「・・・」


兵士:「新国王陛下から伝言を預かっている」


兵士は巻き物を取り出し、ダークナイトに手渡した。

どうやら果たし状のようだ。

冗長な定型文と、日時・場所が記されていた。


ダークナイト:「1対多で真っ向から勝負せよ?笑わせてくれる」

       「良いだろう、相手になってやる。貴様の主人にそう伝えろ」


兵士はその言葉を聞くと、走り去っていった。


決戦の日。

広大な草原に、約5万人の兵士が集結し、待機していた。

空は雲一つない快晴で、太陽は空高く昇り、強い日差しを放っている。

決戦の時刻まで、あとわずかだ。


兵士達は戦闘に備えて気を引き締めた。

ダークナイトの姿は、未だに見えない。

怖気づいて逃げ出したのだろうか?

この草原には巨岩が点在し、中でも最も大きな岩は

太陽の光を浴びて、真っ黒な日陰を生み出していた。

日陰の闇が急速に黒さを増した。

足音が静かに響き、ダークナイトが日陰の中から姿を現した。


「いたぞ!」

「弓の準備を急げ!」


戦場が騒がしくなり、武装した兵士たちは

ダークナイトと一定の距離を保ちながら

その周囲を取り囲んだ。

戦闘開始の合図である、角笛の音が鳴り響いた。

ダークナイトめがけて、矢が一斉に放たれ

雨のように降り注いだ。

ダークナイトは、矢の雨を浴びても平然としていた。

その鎧には、傷一つ付いていない。

ダークナイトは、空を軽く見上げた。

すると、ダークナイトの体から、真っ黒な煙のようなものが

湧き上がり、空に向かってもくもくと立ち昇った。


煙は一定の高さまで昇ると、水平方向に広がり

青空をじわじわと侵食しだした。


黒煙は、やがて太陽をも呑み込み

空は真夜中のように暗くなった。

「灯りをつけろ!」

あちこちで松明が輝き、ある程度の視界が確保された。


ダークナイト:”ダークボール”


ダークナイトの周囲に、数十個の闇の玉が現れ

放射線状に放たれた。


ダークボールがあちらこちらで炸裂し、爆音をあげた。


「接近戦だ!奴に向かって突っ込め!」


馬に跨った兵士達が、剣や槍を手に

包囲網から突撃してきた。


ダークナイト:”ギガス・ブレイカー”


ダークナイトの剣が巨大化し、半径10メートル以内に

あるものを、ことごとくなぎ払った。

巨岩は砕け散り、兵士達は赤い血だまりと化した。


「おいまて、逃げるな!前に進め!」


戦意を喪失した一部の兵士達が、ちらほらと逃げ出す。

ダークナイトは体を拡散させ、忽然と消えた。

と思うと、包囲網の最も外側に姿を現した。


ダークナイト:”ブラックホール”


ダークナイトと兵士達の間に

直径3メートルほどの巨大な円が現れた。

兵士側に向けられた円の面に向かって

恐ろしく強い気流ができ、兵士達は次々と吸い込まれていった。


まもなく、草原に立っている者は

ダークナイト一人だけとなった。


ダークナイト:「さて、自らは戦いに赴かぬ

        臆病者の君主を始末しに行くか」


その時、空を覆っていた暗闇の半分にひびが入り

砕け散って消滅した。

闇が消えた部分の空は、真っ白に輝いていた。

そして、真っ白となった空の側から

白色に輝く騎士が現れ、こちらに向かってきた。


その者は、翼を持つ真っ白なユニコーンに跨り

全身が白く分厚い鎧に覆われ

その手には、閃光のように白い剣が握られている。

白い騎士は、ダークナイトの目の前に降り立った。

白い騎士のユニコーンは、無数の光の玉となって消え去り

二人の騎士は互いに対峙した。


白い騎士:「私の名はレイナイト。貴様の闇の力に対し

      宇宙がバランスをとるために生み出した存在だ」

     「貴様の非道な行い、これ以上許すわけにはいかん」


ダークナイト:「面白い。お前の腕前を見せてもらおう」


二人は同時に斬撃を繰り出し

光の剣と闇の剣が交わって火花を散らした。

二人は後ろに飛び退くと、同時に叫んだ。


”ダークボール”


”ライトボール”


光の玉と闇の玉が衝突し、激しく混ざり合って無に返った。


ダークナイト:”ギガス・ブレイカー”


レイナイト:”ティタン・スレイヤー”


巨大な光の剣と闇の剣が激しくぶつかり、その衝撃で

地面にはひびが入り、空には雷が走った。


”ブラックホール”


”ホワイトホール”


白と黒の巨大な円が向かい合う。

黒い円は、白い円の方向に向かって強烈な

吸い込みを開始した。


白い円のほうは、黒い円のほうに向かって

強力な閃光を伴う爆風を放った。


やがて、両方の円は互いにひきつけられ

ぴったりとくっつくと消滅した。

二人の騎士は、再び接近し、互いに突きを繰り出した。

光の剣はダークナイトの左胸を、

闇の剣はレイナイトの左胸を同時に貫通した。


ダークナイト:「こんな攻撃が効くか!」


ダークナイトに刺さっていた剣が拡散していき、消滅した。


一方、レイナイトの体は、闇の剣の刺さった所から崩壊を始めていた。


ダークナイト:「勝負あったようだな」


レイナイト:「それはどうかな?」


レイナイトの崩壊していく部位から放出される光の粒が

ダークナイトの鎧に付着しだした。


レイナイト:「最初から、刺し違えてでも貴様を倒すつもりだったのさ」


そう言い終わると、レイナイトの崩壊が加速し、

量を増した光の粒が、ダークナイトに襲い掛かった。

ダークナイトの体は、光の粒で拘束され

身動きがとれなかった。


ダークナイト:「俺は貴様の力を取り込んででも、生き延びて見せるぞ!」


レイナイトは完全に消滅し、光の粒で真っ白になったダークナイトが残った。


ダークナイト:「ぐあああ!」


ダークナイトを中心に、激しい爆発が起きた。


草原は消滅し、むき出しとなった地面には

巨大なクレーターができた。

爆心地には、全く何も残っていなかった。

ダークナイトは、完全に無と同化したのだ。


「ここは・・・」

「そうか、生き延びたのだ」

「確か、ダークナイトを浄化しようとして・・・」

「いや、レイナイトの力を取り込もうとしたのだったかな?」


妙なことに、両者の記憶が己の中に存在している。


はっとして、自身の両手を見る。その次に全身を見る。

己の体は、光のように白くも、暗闇のように黒くもない

ガラス細工のように透明な鎧だった。

確信した。


「私はゼロナイト。レイナイトとダークナイトの成れの果てだ」

「いったい今、どれほどの力を所持しているのだろう・・・」


辺りを見回す。


数キロ離れた地点に、一本の木が立っていた。

あれで試そう。

その木に近づこうとした瞬間、その木が目の前に

立っていた。

ゼロナイトは、そのことを特に気にする様子もなく

剣を抜き、木に切りかかった。


木の幹を、透明の剣が横断した。

が、木は全くの無傷でそこに立っていた。

木に触れてみる。

案の定、透明な手は木をすり抜けてしまった。


自身の足元を見る。

大地を踏みしめていたと思っていた足も、

実際には触れておらず

地面から、少しばかり上のほうを浮いていただけだった。

ゼロナイトは、全ての物体に干渉できなくなった

ことに気づいた。

つまり、無に還ったのと等しい。


まあ良い。

以前よりも心は遥かに穏やかとなり、

戦闘と殺戮を求める欲望も、ダークナイトの非道に対する憎しみも

きれいさっぱりと消えていた。



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