04 最強の魔物
※太陽の直視は絶対にやめましょう。
失明する危険があります。
薄く雲がかかった新月の夜。
ダークナイトは起伏の激しい山道を滑るように進んでいた。
この山には、世界最強の魔物と言われる
一匹のドラゴンが住んでいるのだ。
やがて、進行方向にぼんやりとした明かりが見えた。
奴の領域に近づいた証拠だ。
神話によると、かのドラゴン、パージドラゴンは
太陽が沈む時、誤って大地を掠り、
そこで発生した大火事の中心地から誕生したと言われている。
パージドラゴンの周りは、夜間でも昼間のように明るく、
口から吐く光線は、夜空を引き裂くという。
我が力を存分に振るえる、申し分のない相手なのだ。
ダークナイトは急に立ち止まった。
光に照らされた半球状の領域の中心に、ドラゴンはいた。
全身が黄金色に輝き、全長4メートルはあろうかというドラゴンは
地面にうずくまり、ぐっすりと眠っているようだ。
ダークナイト:”ダークボール”
ダークナイトの正面に
直径1メートルほどの暗黒の球体が3つ現れ
パージドラゴンの方角に一直線に飛んでいった。
ダークボールは、光の領域に突入すると、急激に縮小し
パージドラゴンに命中するころには、5センチ程度の玉になっていた。
パージドラゴンが覚醒し、大きな雄叫びを上げた。
ダークボールが当たった箇所には、傷一つついていない。
これほどの巨大な怪物には、
広範囲を切り裂く大技”ギガス・ブレイカー”が有効だが
その剣が届く間合いまで近づかなければならない。
ダークナイトは、滑るように直進を始めた。
光の領域に少し入ったところからなら、
ギガス・ブレイカーもドラゴンに届くだろう。
光の領域に突撃し、ほどよい位置で足を止める。
ダークナイト:”ギガス・ブレ・・・”
体に急速な変化が現れ、技がキャンセルされた。
鎧が銀色となる。人間の姿に戻ってしまったのだ!
ミッド:「くっ、やはり無理か」
パージドラゴンは、鋭い歯がびっしりと生えた口を大きく開き
こちらを向いていた。
非常にまずい。
ミッドは光の領域の終端に向かって、全速力で走った。
轟音と共に、ドラゴンの口から太く強力な光線が発射された。
ミッドは光の領域からの脱出に成功した。
ダークナイトとしての力を取り戻す。
しかし、それと同時にドラゴンの光線をまともに浴びてしまった。
光線は1キロメートル先まで届き、
その軌道上にある全ての物を焼き尽くした。
ダークナイトは跡形もなく消し飛んだ。
それから5年の歳月が流れた。
ドラゴンの光線によって穿たれた山肌の溝には水が流れ
小川となっていた。
その小川の底に横たわっていた黒い鎧は
意識を取り戻し、上半身を起こした。
すぐに川底を蹴って跳躍し、川岸に着地した。
新月時でもこれほどのダメージを負うとは・・・
ダークナイトの頭の中は、憤怒と復讐心で満ちていた。
どうすれば奴に勝てるのか。
新月時が駄目なら、それと同等の力しか出せない皆既月食時も駄目だ。
すると残るは・・・アレしかない。
ダークナイトは、その日に備えて己の技を磨く決意をした。
ある日の昼間。
ミッドは木々の間から、パージドラゴンの様子を伺っていた。
ドラゴンの周囲は過度に明るく、熱気も凄い。
ドラゴンは、前回と同じように眠っている。
周りが騒がしくない限りは、いつでも寝ているようだ。
ミッド:「そろそろか・・・」
ミッドは目を細めて、太陽を見る。
太陽がごっそりと欠けている。
皆既日食まで、もう少しだ。
やがて空が暗くなり、ミッドはダークナイトへと変貌した。
光の領域の端まで一瞬で移動する。
パージドラゴンはこちらに気づき、早々に光線を放ってきた。
ダークナイト:”ブラックホール”
ダークナイトの前方に巨大な黒い円が現れ、光線とダークナイトの間を遮った。
光線は円を直撃したが、円の反対側を突破することはなかった。
恐ろしい空気の流れができ、ドラゴンは円に吸い込まれないよう
足を踏ん張り、光線を吐き続けた。
ダークナイトは、光線が放たれている方角より90°左回りの位置に移動していた。
ギガス・ブレイカーの構えをとった瞬間、ブラックホールは消え去り
自由の身となったドラゴンは、こちらに光線を放ってきた。
ダークナイトは瞬時に体を闇に拡散させ、光線を間一髪で避けた。
ダークナイトはテレポートを繰り返しながら、光の領域の外側に
ダークボールを一つずつ追加していった。
そしてボールが10個になったとき、ダークボールを一斉に
ドラゴンにぶつけた。
苦痛を訴えるように、ドラゴンが吼える。
ダークボールの命中した部分はぼっこりとへこみ、紫色に変色していた。
ダークナイト:”ギガス・ブレイカー”
巨大な斬撃がドラゴンの皮膚を切り裂いた。
ドラゴンの血が飛び散る。
二度目のギガス・ブレイカー。
ドラゴンの胴体に、十字型の深い切り傷がついた。
三度目は突きだった。
漆黒の大剣はドラゴンの首を貫通した。
ドラゴンは、光線の代わりに真っ赤な血を、その口から吐き出した。
剣が消え、ドラゴンの死体は支えを失って、地面に倒れこんだ。
地響きが鳴り、砂煙が立った。
光の領域は消え去り、辺りは真っ暗になった。
しかし、すぐに昼間の明るさが戻ってきた。
皆既日食が終わったのだ。
ん?
ダークナイトは、体の変化が起きないことに気がついた。
今は確かに昼間だ。昼間は人間の姿に戻るはず。
原因は何だろう?
正面を見ると、ドラゴンの死体が巨大な岩と化していた。
これだ。
ドラゴンを倒したことにより、ドラゴンの中で行き先を失った魔力が
こちらに宿ったのだ。
こうして、世界最強の怪物となったダークナイトは
ささやかな報酬を受け取ったのだった。




