03 vsシルバーナイト
番外04に合わせてこっそり修正
中隊長:「えー、彼らが今日から傭兵諸君らと
共闘することとなる第三中隊だ。そして私は
中隊長のガルードと言う者だ。よろしく頼む」
銀白色に輝く甲冑を纏った中隊長は、
新しく中隊に加わる傭兵10人に通例の挨拶をした。
中隊長ガルード:「傭兵諸君には、戦が終わるまでのあいだ
左胸に我が国の紋章を着けてもらう」
中央に黒い猛禽類が模られた、グリーンの紋章を手渡された傭兵達は
各々が紋章を胸に装着した。
中隊の隊員達の鎧には、既に同じ紋章が刻まれている。
ガルード:「この中隊は諸君らを合わせて200名。
一方、敵側も情報ではこちらと同程度と聞く。
圧勝とはいかぬだろうが、
私達の戦術、結束力を最大限発揮し
敵を敗北へと導こうではないか」
既に傭兵達が加入した混成部隊から大きな歓声が上がった。
ガルード:「戦いは本日の午前10時、場所はディルゥ拠点前だ。
あまり時間の余裕がないので、今から気を引き締めて
戦場へ赴くように」
馬に騎乗した中隊はぞろぞろと目的地へ向かった。
「おい、そこの傭兵、知ってるか」
中隊の1人が傭兵の1人(名はミッド)に話しかけてきた。
隊員:「中隊長のガルード殿は、戦場ではシルバーナイトの異名を持ち
敵兵を瞬く間に斬り捨てる。
あの方が参加する戦に負け戦はないと囁かれる凄いお方よ」
傭兵ミッド:「へえぇやるもんだね」
隊員:「だから今度の戦も楽勝だぜ。ってお前全然驚かないな?」
隊員:「すると、お前もかなりの手練ってことか?
立派なのは鎧だけで、大して強そうに見えないがなあ」
ミッド:「いやあ、僕はこう見えても今回の傭兵10人の中じゃ」
隊員:「一番強い?」
ミッド:「一番のへたれなんでね」
隊員はガクッとうなだれた。
隊員:「なんでお前みたいのが傭兵やってるんだよ。
まあ、死なないように精々頑張るんだな」
ミッドは苦笑いした。
そうこうしている間に戦場へ到着した。
ガルード:「皆、良いか!私が先頭をきって突き進み、敵を蹴散らす。
皆は後に続いて残った敵を始末していってくれ!」
またも歓声。
そのうち、遠くに、疾走してくる敵の軍勢が見えた。
中隊長ガルードが馬を駆る。他の者も続く。
激しい乱戦となった。
ぶつかり合う剣と剣、交差する槍と槍。
飛び交う無数の矢。
中隊長は、流石にシルバーナイトと呼称されるだけはあり
1度の攻撃につき確実に敵兵1人を倒している。
一方、ミッドは大して強くもない敵1人に苦戦を強いられていた。
相手の剣技をなんとか自身の剣で受け止める。
その衝撃で手が痺れる。
相手に剣を弾き飛ばされ、そのまま突きを受ける。
間一髪、馬が危険を察して脇に避けた。
しかし、その剣はミッドの鎧を易々と貫通しわき腹を抉ったのだった。
「傭兵!大丈夫か!」
仲間の誰かが叫んでいる。視界が次第に暗くなっていく。
・・・
気がつくと、ミッドは粗い造りの簡易ベッドに横たわっていた。
傷口にあてがわれた綿が赤く染まっている。
ミッド:「ここは」
医務員:「気がついた?
ここは傷ついた戦士の手当てをするための仮陣営よ」
ミッド:「皆はどこにいる?」
医務員:「最初の戦が終わり、第三中隊は次の戦場へ向かったわ」
ミッド:「場所を教えてくれ、今から向かう」
医務員:「だめよ。傷も深いし、手当てが不完全だわ。
どういうわけか、あなたの鎧を脱がせることができないので
包帯すら巻けなかったのよ」
男:「カミバール平原だ。今から馬を飛ばせば間に合う」
ミッドの隣のベッドに横たわっている、
頭と右足に血が滲んでいる男が口を開いた。
医務員:「ちょっと!余計なこといっちゃだめよ」
男:「体が動くなら戦って役に立ちたい。兵士ってのはそういうもんだ。
なあ、若造」
ミッド:「ありがとう」
ミッドがベッドから起き上がると、左脇に激痛が走った。
軽く呻き声を上げながら立ち上がり
馬が繋がれている天幕の外へ足を踏み出す。
外は日が傾き、空がオレンジ色に染まっていた。
馬はどこにも怪我はなさそうだ。元気に鼻を鳴らした。
ミッド:「どうどう。さあ、中隊の所へ連れて行っておくれ」
ミッドは馬に跨り、戦場へと疾走した。
戦場に到着すると、既に第二の戦が始まっていた。
味方の数は160名ほど。40名が先の戦で命を落としたらしい。
一方敵の数は250名ほど。数では圧倒的にこちらが不利だ。
シルバーナイトことガルードが奮闘してはいるが
他の仲間はじわじわと倒され、数を減らしている。
傭兵仲間の1人がミッドに気づいた。
傭兵:「手負いの新人が何しに戻ってきた?
足手まといだ。帰れ!」
中隊の1人が言い返す。
隊員:「おい、士気を挫くような発言は慎め!」
さらにもう1人が言う。
隊員2:「仲間割れしてる場合か!一丸となって敵に挑むんだ」
ミッド:「まもなく、日が暮れる」
傭兵:「何を当たり前のことを言ってんだ?」
ミッドを見ていた3名は言葉を失った。
ミッドの鎧がたった1秒で全身真っ黒に変色したのだ。
脇腹の切り傷は見る間に塞がり
全くの無傷の状態となった。
ミッド:「本領発揮だ」
ミッドの乗ってた馬が急にひどく取り乱して暴れ、
ミッドを振り落として走り去ってしまった。
ミッドはそれに構う様子を見せず、漆黒に染まった剣を抜いた。
敵の放った矢が1本飛んできた。
それはミッドの胸に深々と刺さるかと思いきや
折れて弾き飛ばされた。
それを合図として、ミッドは風のように走り
敵の騎馬兵を切り刻んだ。
騎馬兵は馬ともども大きなぶつ切り肉となって転がった。
戦況は一変した。
ミッドとガルードが敵の約半数を斬り
残り半数は他の仲間が始末した。
ガルード:「諸君、ひとまずご苦労だった。
だがもう少しの辛抱だ。
我々には後一つ任務が残っている。
第一中隊も我々同様、勝利を収めたのだが
第二中隊は戦に破れ、壊滅した。
そこで、第一中隊と第三中隊が増援として
戦に赴くこととなったのだ。
位置としては第一中隊のほうが戦場に近いので
我々は少しばかり遅れていくことになるだろう」
さあ、時間はない。出発だ!」
隊員:「あれだけの活躍をしたミッド殿が見当たらないぞ」
ガルード:「彼の戦闘は鬼気迫るものだった。
あの戦力を用いない手はない。
よし、私とあと3名がこの場に残り、ミッドを探すことにする」
第三中隊はミッド探索用の4名を残し、次の戦場へ出陣した。
~30分後~
隊員:「これだけ探しても見当たらないなんて」
ガルード:「時間が惜しい。私達も戦場へ向かおう。
ミッドについては諦めざるを得ないな」
4名は戦場へ向かった。
~2時間後~
戦場に到着した4人が目にしたものは、切り刻まれた
おびただしい数の死体の山と一面に広がる血溜まりだった。
隊員:「うっ」
ガルード:「なんだこの有様は。
戦でこのようになるとは考えにくい」
隊員:「中隊長!この殺られ方ってまさか」
悪い予感が皆の頭をよぎった。
「そう、俺が殺った」
漆黒の鎧戦士がどこからともなく姿を現した。
隊員:「ミッド!」
ガルード:「ミッドよ、他の仲間はどうした?」
ミッド:「俺に仲間などいない。 俺はその場にいた全員を殺した。
その中には”お前達の”仲間もいたかもな」
場の空気が凍りつき、しばし沈黙が訪れた。
隊員:「この下種が!」
ガルード:「貴様を地獄送りにする前に聞いておくことがある。
なんの目的で私達の中隊に入った?」
ミッド:「俺の望みは強い者を打ち倒し、破壊することだ。
最初は悪党狩りなどをしていたが、どうにも手ごたえが無くてな。
そこで傭兵の仕事に目をつけた。
傭兵として戦いの前線にいれば、強い奴を見つけられると踏んだのだ。
奴らは戦いのプロだからな。
傭兵を受け入れてくれるのならどこに所属しても良かった。
そしてついに俺の目に適う奴をこの場で見つけた」
ミッドはギラギラと光る眼でガルードを捉えた。
ガルード:「そうか、確か聞いたことがある。
貴様、ダークナイトと呼ばれる化物だな?」
ミッド/ダークナイト:「貴殿と相見えることができて光栄だよ、
シルバーナイト殿」
ガルード:「第三中隊に告ぐ!即刻この場を離れよ!
お前達の敵う相手ではない!」
隊員:「冗談じゃありません。仲間を無残に殺されて黙って逃げ帰れますか」
隊員2:「我々はいつもガルード殿と共にあります!」
ガルード:「くっ」
ダークナイト:「雑魚は失せろ」
”ダークボール”
直径1mほどの黒い球体が3つ、ダークナイトを取り巻くように
空中に出現した。
3つ球体は視認するのが精一杯の速度で
ガルードの部下に直進した。
鈍く重たい爆音が3回立て続けに轟く。
ダークボールの闇が晴れたとき、そこに3名の死体が転がっていた。
ガルード:「このバカどもめ。お前達の仇も私が必ず取る」
ダークナイト:「中隊長殿も受けてみるか?」
ダークボールが出現し、ガルードの鎧に直撃する。
鈍い爆音がした。
予想に反し、ガルードの鎧は無傷だった。
ダークナイト:「バカな、人間にこの術が防げるなどと」
ガルード:「教えてやろう。この甲冑、ついでにこの剣は純銀製だ」
ダークナイト:「!」
ガルード:「貴様は魔物の類のようだな。
ならばその魔術は銀製の道具には効かん」
ダークナイト:「シルバーナイトの名は伊達ではない、ということか」
ガルード:「私の剣で一刀両断されるがいい!」
ガルードは馬を駆って急襲した。
ダークナイトはすんでのところで身を逸らした。
が、銀の剣はダークナイトの左腕に深々と刺さっていた。
ダークナイトは腕をぐいと引き寄せ、その腕から剣を外した。
ダークナイト:「なんだ、この焼けるような痛みは。
おまけに傷口が修復されぬ」
ダークナイトは夜間、いかなる傷も1秒程度で修復される
反則じみた能力を持っている。
しかし、銀によるダメージはその修復能力を著しく阻害するのだ。
ガルード:「化物よ。貴様はここで退治される運命なんだよ」
ダークナイト:「どうやら俺も手段を選んでる場合ではないようだな」
ダークナイトは剣を持っていない左手を、何もない場所へとかざした。
夜よりも暗い、漆黒の魔法陣が地面に浮かび、
そこから黒い大きなトンボのような化物が召喚された。
まるで桑の実を思わせるような多数の丸く、赤い目と、
その目と目の間から時折生える角が合計10本ほどある。
2対ある刃のように鋭い羽は、
細長い腹部の上部に接続され、せわしなく上下している。
黒く細長い3対の脚にある鋭い鉤爪は、地面をがっしり突き刺し掴んでいる。
ダークナイト:「これが俺の馬よ」
ダークナイトはその怪物に飛び乗った。
怪物は甲高く耳障りな声で鳴いた。
ダークナイト:「いざ勝負!」
ガルードも剣を構える。
しばしの沈黙。
前触れもなく突風が吹いた。
それが合図になった。
ダークナイトとシルバーナイトが交差する。
鋭い金属音が2度、間髪を容れずに響く。
ダークナイトの左胸には、銀の剣が突き刺さっていた。
一方、ガルードの首には漆黒の剣が刺さっていた。
その箇所は銀の鎧で覆われていないので、魔剣の攻撃に無防備だった。
ガルードが傷口から血を吹き、落馬する。
ダークナイトの召喚したトンボのような化物は、黒煙となって消えた。
胸に剣がささったまま、ダークナイトは仰向けに倒れる。
ダークナイト:(俺の力の根源である呪いの塊は、胸の中央に位置していた。
奴の剣があと少し中央寄りに刺さっていたら
俺は滅んでいたかもしれん。
シルバーナイト。
俺をここまで追い詰めたことに敬意を示そうではないか)
1時間後、銀の剣はダークナイトの胸部から抜け落ち、
ダークナイトは起き上がった。
そしてよろめきながら、その場を去って行った。
中隊長のガルードは、二度と立ち上がることはなかった。
彼の馬はただ悲しげに、その場に佇んでいた。




