02 vs賞金稼ぎ
盗賊X:「棘の森の奴らに始まり、浅黒谷、波切峠の連中まで
一人残らず殺られたらしいぜ?」
盗賊Y:「一体どうなってやがるんだ・・・」
ここは、とある盗賊団のアジトである。
近年、各地の盗賊団が何者かに襲撃され
話題となっていた。
盗賊Z:「お、俺のダチがよ、見たらしいんだよ」
盗賊X:「ん?」
盗賊Z:「たまたま波切峠の奴らに用があったらしくて」
「そしたらよ、夜でよくは見えなかったらしいんだが
黒っぽい騎士みたいな鎧を着た奴が、
剣を振り回して大暴れしてたんだとよ」
「それを見たダチは怖くなって、
岩場の影にずっと隠れてたってよ」
盗賊Y:「闇の騎士か・・・」
ダークナイトの噂は盗賊業界で瞬く間に広まり
ダークナイトの首に賞金を出すと言う者も現れ始めた。
そして、とある別のアジトにて。
盗賊団団長:「まさか、あんたのような凄腕の賞金稼ぎが出向いてくるとはな」
トロルトス:「100万ブロン・・・悪くねえ」
「そいつの首を持ってくればいいんだな?」
団長:「ああ。これで安心して盗賊業が続けられるってもんだ」
正午過ぎ。
盗賊狩りに味を占めたミッドは
次の標的がいる土地に向かって歩いていた。
元々は、こういった血なまぐさい行いは好きではなかったが
化け物となったあの夜以来、戦闘と殺戮を好むようになっていた。
道の向こうから、ハゲ頭の大男が歩いてくるのが見えた。
その肩には、鎖のついた大きな鉄球を下げている。
男は2メートルほど離れた場所で立ち止まり、声をかけてきた。
大男:「あんたはどこの兵士だね?」
ミッド:「どこにも属してない、ただの鎧マニアさ」
大男:「ふむ」
大男は肩にかけていた鉄球を構えた。
いきなりまずい雰囲気だ。夜間なら問題なく対処できるが
今は昼間だ。並みの人間程度の力しかない。
大男:「ダークナイトって悪党を探していてな」
「そいつは鎧姿で、あちこちで盗賊を殺しまわっているそうだ」
「それをこの俺様が退治してやろうってこった」
ミッド:「ま、待て、俺はそいつじゃないぞ。第一、そいつが出るのは夜間だろう?」
大男:「ほう、俺様がしゃべっていない特徴を知ってるってことは
当たりと見て良いな」
しまった。
大男の鉄球が飛んできて、ミッドの胴体に直撃した。
内臓が破裂し、ミッドは即死した。
大男は腰に差していた鉈を抜き、死体となったミッドの首を刈り取った。
大男:「へへ、100万ブロン頂きだ」
その日の夕方。
ミッドの首を手に入れた賞金稼ぎ、トロルトスは
酒を飲みながら盗賊たちに自慢していた。
トロルトス:「そこで、俺様自慢の鉄球を奴にぶち当てたのよ」
「奴め、なんの抵抗もなくおっ死んじまった訳よ」
盗賊J:「いやー、トロルトスさん、いい仕事しますね」
盗賊K:「俺らには絶対真似できないっす」
トロルトス:「当たり前よ、この俺様にかかれば
ダークナイトだろうとドラゴンだろうとお手の物よ」
三人の笑い声が辺りに響く。
そのとき、辺りが急速に暗くなった。
どこからか、金属質の足音が聞こえ
その音は、段々と大きくなってきた。
トロルトス:「いやまさか、奴は確かに仕留めたはずだ!」
深くなりつつある暗闇から、漆黒の首なし鎧が姿を表した。
盗賊J:「トロルトスさん、急に用事を思い出したんで、失礼します」
盗賊K:「あ、俺は便所に行かないと」
トロルトス:「お前ら・・・まあいい、雑魚はさっさと失せな」
盗賊たちは、全速力で逃げていった。
トロルトス:「さてと、もう一度鉄球を喰らいに来たのか?」
そう言うと同時に、鉄球をダークナイトに命中させた。
ダークナイトの上半身は、バラバラに砕け散った。
と、一秒もしないうちに砕けた破片が集まり、元の姿となった。
トロルトス:「ち、化け物めが。何度でも砕いてやらあ!」
そのときトロストスは、ダークナイトの首を入れた袋が
無くなっていることに気づいた。
袋はダークナイトの真上に浮遊していた。
ダークナイトの剣が閃き、袋は真っ二つとなった。
そして、ダークナイトは完全な姿を取り戻した。
ダークナイト:「ようやく口が利ける」
「そこのハゲ野郎、昼間の礼はたっぷりさせてもらうぞ」
トロルトスは既に二度目の鉄球を放っていた。
ダークナイトは回避に努めたが、またも直撃してしまった。
どうにも調子が出ない。というのも今夜は14日目のほぼ満月だからだ。
ダークナイトの力は、月の満ち欠けにより増減する。
満月時が最弱で、力は昼間の二倍程度しかない。
逆に新月だと、千倍程度にはなる。
よって並みの人間の数十倍は強い、この男が相手だと
負けはしないものの、勝つ事も厳しいだろう。
トロルトス:「へっ、不死身ってこと以外は大した事ねえな。
このまま朝まで潰し続けてやるよ」
策を思いつかないまま、かれこれ11時間は戦い続けているだろうか。
相手は全く疲れた様子を見せない。奴も化け物の類だろうか?
ダークナイトの体に異変が起きた。
黒い鎧は銀色となり、中身も闇から生身の肉体へ変化した。
トロルトス:「魔力が切れたようだな。これで終わりだ!」
ミッドは鉄球を受け、再び即死した。
トロルトス:「二度と復活できないように、分解してやる」
ミッドの死体は鉈で切り刻まれ、バラバラ死体となった。
朝の9時ごろ、トロルトスは教会に赴き
聖職者に、ミッドの死体の処分を依頼した。
トロルトス:「こいつは不死身でな、夜になると復活し、人々に危害を及ぼす」
「どうにか浄化してくれねえか?」
聖職者:「分かりました、やってみましょう」
トロルトス:「じゃ、よろしくな」
トロルトスは教会を離れ、宿屋を探しに行った。
いかに屈強な賞金稼ぎといえども、人間である以上は
休養は必要なのだ。
一方、教会では、聖職者がミッドの浄化に苦戦していた。
聖職者:「うーむ、なんと強力な呪いだろうか」
「おお、神よ、この呪われし者に、永遠の眠りをお与え下さい」
聖職者は優秀であったが
ダークナイトの呪いは、その力を遥かに上回るものだったのだ。
ミッドの死体は、部分ごとに別々の箱に入れられていた。
復活を妨げる応急処置だ。
考えた末に、死体の入った箱は
各自が遠く離れた場所に埋葬された。
そして、再び夜が訪れた。
満月が煌々と輝く静かな夜だ。
トロルトスは、周囲が見渡せる平原で辺りを警戒していた。
ダークナイトが再び現れる可能性は十分ある。
それまでは、昼夜の逆転した生活を続けるつもりだ。
トロルトスの前方で何かがちらついた。
黒い鎧のパーツが空中に突然現れ、
瞬く間に融合し、黒い鎧騎士となった。
トロルトス:「あの聖職者め、しくじりやがって」
ダークナイトがゆっくりと近づいてきた。
トロルトス:「よう、まだやられ足りねえか?」
鉄球が放たれる。
ダークナイトは、すんでの所で鉄球を回避した。
トロルトス:「ほう、少しはやるようになったか」
ダークナイトは、自身の能力に違和感を感じていた。
今夜は満月、絶不調のはずだ。
はっと気づき、満月を見上げる。
月が欠けている!三日月よりも更に細い。
再び鉄球が飛んできた。
ダークナイトは片手を突き出し、いとも簡単に鉄球を止めた。
トロルトス:「くそ、何がどうなってる!」
三度鉄球を投げる。しかし、ダークナイトは忽然と姿を消し
鉄球は地面にぶち当たった。
ダークナイト:「こっちだ」
トロルトスが声したの方角を見ると
黒い鎧に少しだけ不気味な赤い光を纏ったダークナイトの姿があった。
トロルトス:「この光は・・・まさか」
ダークナイト:「そうだ。俺の力は月食にも影響されるようだ」
「そして今は完全なる月食、皆既月食。お前に勝ち目はない」
トロルトス:「糞が!」
四度目の鉄球。
ダークナイト:「ギガス・ブレイカー!」
ダークナイトが剣を一振りするほんの一瞬だけ
漆黒の剣が巨大化し、5メートルほど遠くの
トロルトスと鉄球、ついでに地面をざっくりと切り裂いた。
二分されたトロルトスの死体は紙切れのように吹き飛び、遥か遠くへ墜落した。
翌日。とある教会で、聖職者の遺体が見つかった。
呪われた黒い騎士は、関わる者を容赦なく死の闇へ突き落とすのだ。




