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番外06 - 襲い来る鎧戦士



黒雲立ち込める闇夜。雷鳴が(とどろ)き、稲妻があちらこちらに落ちる。

血の鎧戦士(ブラッドウォーリア)が死んだか」


黄金に輝く鎧で全身を覆われた、雷の鎧戦士(サンダーウォーリア)が呟く。

気まぐれに落ちる幾つもの稲妻から、その周囲の様子を感じ取れるのだ。

「他の鎧戦士に伝えねばならんな」




それから幾日か経過し、有明月がまだ昇る前の夜中。

ダークナイトは闇から闇へテレポートを繰り返し、彷徨っていた。

唐突にダークナイトにちっぽけな極細の稲妻が落ち、ダークナイトは一時足を止めた。

「何だ?」


辺りを見回すと、様々な形の白骨が鎧状にくっついた物を着たスケルトンが近づいてきた。

異様なスケルトンは言葉を発した。

「血の鎧戦士を殺した者よ。私は骨の鎧戦士(ボーンウォーリア)

 亡き友人の仇討ちのため、貴殿に決闘を申し込む」


ダークナイトは骨の鎧戦士をじっと見た。

浮かんだ数字は1。

人を一人殺している証だ。

「受けて立とう。場所はここで良いか?」


「こちらで指定させて貰う」

ダークナイトの問いに骨の鎧戦士が返した。



一般人の全速力よりもやや早いスピードで走っていた、骨の鎧戦士が唐突に立ち止まった。

ダークナイトも合わせて止まる。

二者が立っている周囲一帯は、墓石が規則的に並ぶ広い墓場だった。

骨の鎧戦士が抜剣した。

どうやら決闘の場所に着いたようだ。

ダークナイトも抜剣し、二者は対峙した。

骨の鎧戦士が白骨の剣を高く掲げる。

それと同時に地面がぐらぐらと揺れた。

ダークナイトは動じず、その場を動かなかった。

その時、ダークナイトの足元の地面から白骨化した腕が飛び出し、ダークナイトの脚に絡みついた。

それから続々と地面からスケルトンが湧き出し、ダークナイトは十数体のスケルトンに覆われ、見えなくなった。

「貴殿の骨もはぎ取って、下僕の一員に加えてやろう」


骨の鎧戦士は冷徹に言い放った。

スケルトン達が群がり、小さな丘が形成されつつあったがその時。

まるで爆発が起きたように、ダークナイトに殺到していたスケルトン達が吹き飛ばされた。

ダークナイトがその怪力に任せ、骨の鎧戦士めがけて突進してきたのだ。

ダークナイトは見る間に距離を詰めると、骨の鎧戦士に左右反転したL字形の斬撃を放った。

骨の鎧戦士の両脚、左腕が切り離されて、宙を舞う。

「ぐっ、やりおるな。だが右腕が残っているぞ!」


骨の鎧戦士は右手に持った白骨の剣を、ダークナイトの眉間辺りに勢いよく突き刺した。

白骨の剣はダークナイトの頭部に深々と突き刺さった。

ダークナイトは全身をぶるっと震わせた。

「やはり、呪いが最も濃い部分は剣か。貴様らの弱点は共通のようだな」


頭を貫かれたダークナイトが、平然と喋る。

「貴殿、まだ動け」


骨の鎧戦士の言葉を遮るように、ダークナイトは漆黒の剣で白骨の剣を斬り払った。

白骨の剣は真っ二つに折れた。

ダークナイトは頭に刺さった剣の残りを左手で引っこ抜くと、地面に投げ捨てた。

「ガガガガッ」


骨の鎧戦士はもはや言葉にならない音を出すと、ぐしゃっとその場に(くずお)れた。

周囲を蠢いていたスケルトン達も、同時にパタパタと倒れる。

遠くで雷鳴が鳴り響いたが、ダークナイトは気にも留めない。

”ブラックホール”


ダークナイトはブラックホールを発動し、骨の鎧戦士だった白骨の小山を吸引・消滅させた。

「こいつらは、地道に埋葬し直すか」


ダークナイトは辺りに散らばる大量のスケルトンの残骸を見ながら呟いた。

ダークナイトの持つ漆黒の剣が、いつの間にか漆黒のシャベルへと変形していた。




時は経過し、次の日の夜。

ダークナイトは新たな鎧戦士と対峙していた。

浮かび上がる数字は1。

「我は鉄の鎧戦士(アイアンウォーリア)。我が同胞を二人も葬った貴様の罪は重い。

 我が直々に成敗するぞ」


「場所を変えるか?」


ダークナイトは提案する。

「そんな小細工を弄するまでも無し。我は鎧戦士中、最硬の戦士ぞ。貴様に勝ち目は無し」


そう答えた鉄の鎧戦士は抜剣した。

「そうか」


ダークナイトは抜剣すると同時に鉄の鎧戦士ごと、鋼鉄の剣を斬り折った。

「最硬というには柔らかすぎだ」


ダークナイトの言葉と共に、鉄の鎧戦士は大きな鉄の結晶に変わった。

ダークナイトは手ごたえに違和感を覚えていた。

鎧戦士の中核と思われる、呪いの気配を全く感じなかったのだ。




更に次の日の夜。

ダークナイトはごつごつとした岩場にて、石の鎧戦士(ストーンウォーリア)と対峙する。

浮かび上がるのは、またもや数字の1。

「貴様らに二つ質問がある」


「良いだろう。可能な限り答えてやる」


石の鎧戦士は快諾した。

「一つ。貴様らはなぜ一斉にかかって来ない?」


「俺達は誇り高き鎧戦士。どんな難敵だろうと一対一が信条だ」


「二つ。鉄の鎧戦士とやらを倒した時に、呪いを感じなかった。

 貴様らは呪いが中核ではないのか?」


「俺達はかつてダークロードという巨悪に創られた。その時は全員が強い呪いを身に纏っていた。

 だが程なくダークロードから離反すると、自己の存在意義や自己の感情を蝕む呪いに疑問を持ち始めたのだ。

 長い修行と瞑想の末、鎧戦士のうち多くは呪いを浄化し、

 魔物から自然の化身である精霊へと昇華したのだ」


ほう、とダークナイトはやや興味を示す。

「おしゃべりはここまでだ。仲間の仇。叩き潰してくれる」


石の鎧戦士は石剣をすらりと抜くと、隣の岩壁に突き刺した。

そのまま剣ごと右腕の中ほどまで埋まっていく。

すると、岩壁を構成する数十メートルほどの大きさの岩塊がぐらりと動いた。

石の鎧戦士に繋がった岩塊は持ち上がると、みるみるうちに巨大な岩の腕へと変形していく。

夜の闇をも飲み込まんとする巨大な岩の腕は、異様な威圧感を放っていた。

そのうち、巨大な岩の拳がぐわっと開いてダークナイトに迫った。

ダークナイトは微動だにしなかった。

巨岩の手はそのまま、ダークナイトを握り潰した。

「終わったか」


石の鎧戦士が巨岩の腕を維持しながら一息つく。

その時だった。

ひしゃげた無数の黒い金属片が、巨岩の腕の上に一斉に出現した。

その場でつむじ風が起き、コンマ5秒でダークナイトは完全再生した。

「バカな、奴は不死身か?」


石の鎧戦士は驚き半分、呆れ半分に呟いた。

”ブラックホール”


ダークナイトの展開したブラックホールが、ものすごい勢いで巨岩の腕を吸い込んでいく。

「ちっ」


石の鎧戦士は舌打ちすると、すでに形を留めていない巨岩の腕から自身の腕と剣を引き抜き、

他の岩塊に石剣を打ち込もうとせんと動く。

手ごろな岩塊を見つけ、石剣を入れようとしたその刹那、漆黒の剣が石剣を一刀両断した。

ダークナイトはすでに、石の鎧戦士の正面にテレポートしていたのだ。

石の鎧戦士はバタンと倒れると、大小の石片に砕けた。

もはや鎧戦士としての面影は微塵も無かった。

遠方で雷光が輝き、雷鳴が轟く。

ダークナイトは遠くの稲妻をちらっと見ると、無言でその場を立ち去った。



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