まだまだ準備
「ところで明日俺たちが向かうトリスティン首都ってどんなところ?」
「あー……ここ三世紀くらい世界を見ていなかったからどうなっているかわからんが……昔はエルフとドワーフと獣人が暮らす国だったと思う。当時はドワーフの武具や装飾品、エルフの薬、獣人の狩人と揃ってかなり栄えていたようだった」
やっぱりドワーフは鍛冶師か。
それにエルフはくすりね……。
「エルフとかって長寿なの?」
もし三世紀前から生きているエルフがいたら話を聞いてみたいと思う。
「この世界のエルフはそうでもないのう、長生きしても三百年といったとこかの。当時の赤ん坊は生きていれば足腰立たない爺さん婆さんで来年同じ季節を迎えられるかどうかといったとこか。平均的に見ても二百五十年生きれば十分な年齢と言われておる。ついでにドワーフは平均百二十、獣人は短くて六十年だった。」
あー何千年も生きるわけではないのか。
テンプレだと超長寿だったりするからな……。
それ言ったらドワーフは鉱山に、エルフは森に住んでるのがテンプレだけどこの世界ではそうでもないみたいだな。
「さて、捌き終えたぞ」
「お疲れ様、主」
獲ってきた鳥と鹿を捌いて凍らせた。
羽と毛皮はリナに渡して、肉は四次元革袋に入れる。
捌くのに使った包丁はまずの魔法使って入念にあらっておく。
「それにしてもやることがなくなってしまった」
「そんなに暇なら日本にでも行ってきたらどうだ」
「行ってどうするんだよ、今更必要なものもないし……いや、アレとかあったらいいかもしれん」
地球には便利な道具があるのを忘れていた。
あれがあれば移動もらくらく快適だ。
「何か欲しいものでもあった?」
「あぁ、とはいえあれは安いものじゃないからな……こっそり盗んでくるよ」
「神の前で堂々と盗む宣言とは……だいぶ神らしい性格になってきたの」
いいのかよ、自分でも一瞬まずいかなと思ったのに。
ただまぁお許しが出たと考えればいいか。
それに盗んでくるとは言ったが直接行くわけではなくこちらの世界に転移させるだけだし。
「さーて……おいでませ!」
景気づけに両手を打ち合わせる、自分の身体能力を忘れて思いっきり。
あたりに衝撃が走った、主に物理的な意味で。
「み……耳が……」
衝撃波の発信源にいたため聴覚も平衡感覚も狂ってしまった。
世界がぐるんぐるん回っている。
「おばか」
あぁ、その呆れた視線ゾックゾクする……。
五分かけてどうにか復活した。
まだクラクラするけどなんとか動ける。
さっきは衝撃波が起こったことで集中力途切れて転移に失敗したのでもう一度。
「気を取り直して……おいでませ!」
今度は軽く両手を叩く。
何度も言うがこの行為に意味はない。
ともかく今回は成功した。
転移させたものは車、長年の夢だったハンヴィーを呼び寄せた、もちろん鍵も一緒に。
日本にいた頃何度も乗り回したいと思っていたけど軍用車なんてホイホイ手に入るもんじゃないからね。
それに俺は貧乏学生だったし。
「車……あれば便利だけどこんなもので首都に近づいたら不審者として逮捕確実だと思うがそのへんは考えているのか?主」
……考えていませんでした。
「つまり使っちゃダメと……?」
「今回はお預けだ、そのうち魔王のもとに行くときにでも使えばよかろう」
そうか……使える機会があるだけマシと諦めて四次元革袋にしまっておこう。