リナ本来の目的
昨日、リナに大切な話があると言われた。
これは告白フラグではないだろうか!
何度か水に映った自分の顔を見たがやばかった。
中性的な顔つきに癖なのかはねているショートヘアー、体型は地球にいた頃のようなたるんだものではなく六つに割れた腹筋と革の余らない上腕二頭筋が素晴らしい。
身長も以前より十センチ以上高いと思う。
今の俺なら自分に自信が持てる、そんな気がしないでもない。
リナ自体も相当可愛い、いつの間にかベタ惚れしている有様だ。
アピールしたりセクハラしたりして何度もぶっ飛ばされているけども。
「おはよう、早いのだな……隈ができているが寝ていないのか?」
「大切な話が気になってね、告白なのかプロポーズなのかもうドッキドキ」
「そうか、バカは肉体が変わっても治らなかったか。残念ながらそんな浮ついた話ではない。主をこの世界に連れてきた本当の目的を話そうと思う」
なんだと……?
告白でないのか……?プロポーズではないのか……?
あx……足元が崩れていくようだ。
「いつまでそのアホくさい演技をしているつもりだ、さっさと席について話を聞かんかい」
あ、演技ってバレてたか。
地球にいた頃ブサイクすぎて恋愛なんかカケラも出来なかったからね、それどころか中学になって席替えで隣の席になった女の子に泣かれたことがあるくらいだ。
そんなにしょっくではないさ、ちょっと期待したけどね。
ついでに席に着くっていうのは家を作った時ついでで作ったテーブルと椅子のこと。
上等な品ではないけど使いかってはいい。
他にもベッドやタンスも作ったりした。
洋服はリナが創造した、最初からそれで作ればよかったのではと思わないでもない。
「はいはい、それで俺をこの世界に連れてきた本当の目的って何?」
「うむ、まず魔王や最高神がニートとという話は嘘ではない。また中級神程度ならこの世界に降り立った瞬間ただの人間レベルまで弱くなってしまうというのも本当だ。そのためこの世界は管理する神がいない。もともと神は現地で偉業を成し遂げて民に神と認められて初めてその世界を管理できるようになる。主の世界で言うならば島を作ったとか飢餓から救ったとかかの」
あー日本神話や救い主様のお話とかか。
「それでな、中級神では偉業どころかなにもできない、上級神は仕事が山積みで忙ししこの世界に来たら下級神程度まで弱くなってしまうため小さなことしかできない。最高神はニートで働かないと来た。このままでは世界を管理する神が不在のままになってしまう。それはあまりにも良くないので新たに最高神を創ることにしたのだよ。それに選ばれたのが主含む十二人、最初は十二人それぞれに役職を儲けるつもりだったのだが大失敗だのう、その分修行は実りのあるものとなったがな。
話を戻してだ、この世界に主を連れてきた本当の理由は魔王を倒し、英雄として名を残し、神としてこの世界を管理して欲しい。」
「つまり、魔王倒して英雄になって、神として振舞って、最後は天界に行って世界を管理しろと?」
「うむ、バカでも飲み込みが早いのは素晴らしいことだ。概ねその通りだ。」
バカでもは余計だ、バカだけど。
「なに、世界の管理なんてそう難しいことではないわい。強いて言うならどこかでバグが起きていないかとかほかの世界から不当な手段で侵入したやからはいないかとかそういう事に目を光らせていてくれればいい。そして異常があった際は自ら行くなりどこかの世界から誰かさらってきて丸投げするなりすればよいわ。」
「随分と適当な・・・・・・」
「神なんてのはそんなもんよ。それで……改めてこの世界の管理者となるため、この世界で偉業を成し遂げてほしい、我が主様よ」
「いいよ」
特に断る理由はない、というかもともと刺激が欲しくてこの世界に来たんだし魔王退治なんて憧れる話じゃないか。
「ずいぶんとあっさり……さすが主様、神らしい適当っぷり」
「そんなに褒めるな、照れる。それで?いつ動けばいい?」
「ふむ、これからしばらくは世界中を旅するとしようか。拠点であるこの森には主の願いで手に入れた移動能力ですぐに帰ってこられるし、せっかく作ったのだからギルドに登録して大暴れというのも悪くはあるまい。もっとも魔王を名乗っている阿呆が世界征服だの人類滅亡だの言いだしたらすぐに動くことになるがのう」
そういえば魔王って力のある魔族が勝手に名乗っているだけだっけか。
種族といえばほかにもエルフとかいるんだよな、楽しみだ。
「最初はこのトリスティンの首都でも目指せばよかろう。今日は食料を探して明日朝一番に出発しようと思うが」
「異論はないよ」
「では、私よりとってきた食材が少なかったら明日は馬車馬のようにつかてやるからのう。せいぜい頑張るのだぞ主よ」
そういってリナは家から飛び出していってしまった。
馬車馬か……わるくないけど食料はしっかり集めよう。
数時間後。
結局リナに負けました。
まさか熊三頭も狩ってくるとは思わなかった。