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 それから1時間ほどかけてバルバトスを、主に股間を中心に滅多打ちにしたところで本来の目的を思い出した。

 俺とリナはこの街へギルド登録に来たんだ。


「おい起きろ糞野郎」


「おう、もっと強く頼む」


 力の限り頭を蹴り上げて、地面に寝たままだったバルバトスを叩き起こす。

 けれど無駄に元気なこいつはさっきから楽しそうだ。

 なんかむかつく。


「俺とリナのギルドカード作れ。

名前偽装でその他の情報も適当だ」


「いいぜ、今夜一晩」


「いよっし、ぶっ殺す」


 貞操の危機を感じてこぶしを握る。

 そこでリナに腕をつかまれた。

 リナの手が柔らかくてドキドキする。


「スルト、あんたまだ力使いこなせてないわね。

ほらこうやって力を込めるの。

ただ握ればいい物じゃないわ。

拳に力を込めて、ついでに神の力を込める。

やってみなさい」


 リナに言われたとおりに力を使ってみる。

 するとなぜか右手が輝き始めた。


「そうそう、覚えるのは早いわね」


「おぉ! やればできるんじゃねえか!

なんだよじらしてたのかよ! 」


 ……とりあえず無言でバルバトスの顔を殴り飛ばした。

 いや、今のおれは悪くないと思う。

 けど一つ誤算だったのは、バルバトスの頭部がはじけ飛んでしまったこと。

 こうトマトみたいにあたりに脳漿ぶちまけて。


「あちゃー」


「リナ可愛い」


 リナは直立不動のままやっちゃったねえというニュアンスをこちらに向けてくる。

 そこに非難の色は含まれていない。

 対して俺は思いのほか威力が高かったこともあって、動揺している。

 そんな理由で漏らしてしまった言葉でリナが動揺して、俺もほほをたたかれて地面に倒れこんだ。


「熱いキスじゃねえかおい! 」


 地面から声が聞こえる。

 先ほどぶちまけたバルバトスの血肉だ。

 ……いやまあ神様だしこのくらいは平気か。


「まあ今回はこれくらいでいいだろう。

 ギルドカードは作っといてやるから明日ここにきな。

ただし仕事は他の街でやれよ。

お前らここじゃだいぶ問題視されてるからな。

それから暇があれば遊びに来い。

歓迎してやる」


 最初はバルバトスの拠点に行こうという予定だったが身の危険を感じて中止にした。

 それは英断だったと思う。

 というよりリナがさっきから圧力をかけていたからさすがにまずいと思ったんだろう。


 なんにせよ、今日どこに泊まればいいんだろうか。

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