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交渉(物理)

とはいえ山の中に生きている者は、獣人間問わず残っていなかったので適当なクマを拾って街へ戻ることにした。

そして、問題は戻ってからだった。

街の入口で武器を構えた集団がこちらを睨んでいる。

だいたい予想はつくが、どうしようもないことなのでクマを引きずったまま近づき、ギルドのおっさんを見つけ出した。

その体格に見合った両手斧を持ってこちらに警戒している。


「言われたとおり、適当な獣だ」


おっさんにクマを差し出す。

少し周囲がざわついたのは……この騒ぎの現況を見つけたからだろうか。


「あの気配はお前たちのものか」


「違う、が俺たちの知り合いのものだとだけ言っておこう」


嘘は付いていない、俺もロキシーとは今の段階では知り合いということになる。


「そいつに手伝ってもらったのか」


「それも違う、懐かしい奴を見つけたからという理由で向こうから話かけてきた、それだけだ」


その言葉におっさんが顔をしかめる、それに合わせて周りの男たちが武器をジリジリと構えている。

間違いなく僕たちに警戒しているな。


「素顔を見せてもらえるか」


おっさんはその言葉をひねり出すとともに、ゴクリと唾を飲み込んだ。

よく見ると額から汗が噴き出している。

ちらりとリナに視線を向けると、首を横に振った。


「悪いがそれはできない」


「ならばお前たちを、拘束させてもらう」


あぁ……大体わかってたけどやっぱりこうなるのか。

武器、今回は市販の剣を抜いて冒険者や騎士の集団に向ける。

いつの間にか人数が増えていたのが気になるところだ。


「くっ」


俺が武器を構えると同時におっさんがジリジリと交代後退し始めた。

その動きに何を考えているのか読めなかったので様子を見ることにした結果、集団から様々な攻撃性の魔術が襲いかかってきた。

多分この魔術に巻き込まれないためのに引いたのだろう。

それを剣を振るって一つ一つ打ち消していく。

しかし、魔術は波状に襲って来るためキリがない。

このまま続ければ向こうが魔力切れを起こしてくれるのだろうけど、それを待っているのも面白くない。

現に後ろでリナがあくびをしている。


面白い方法、勝ち誇った相手を打ちのめすというのはよくある話だけどあれは面白い。

雷の魔術を払ったところで剣をわざと取り落とす。

カランという軽い音とともに剣が地面に転がるのと同時に魔術の波に穴ができる。

誘われているのはわかるがあえてそこに飛び込んでみせる、と両手斧をおおきく振りかぶったおっさんがいた。

なるほどこれは普通では避けきれない。

けれど、斧を蹴り飛ばして起動を変えさせる。

機動を無理やり変えさせたせいか、体に負荷がかかったのだろう。

おっさんは両手斧を落とし、その場に倒れこんでしまった。


「次は、誰にするか」


ボソリ、と呟く。

聞こえるように言った為前方数名はたじろいでいるのが見える。

そこからは再び魔術による波状攻撃が始まった。

それらを今度は打ち消さずに、一つ一つかわしていく。

確かに隙間なく埋められたように見えるが、所々に小さな穴がある。

神ならではの神経だからこそ回避できているが、人間だったら確実に消し炭になっているだろう。


「今のはおしいぞ」


途中よけ損なった魔術が仮面を掠める。

けれどこちらには一切のダメージがない。

そんな攻防が十分も続いた頃に、魔術の波が途切れた。

辺りを見渡すと先程まで魔術を売っていたであろう人たちが呼気を荒くして地面に突っ伏している。

その光景の真っ只中にいてもなお、誰ひとり逃げ出そうとするものはいない。


「逃げてもいいんだぞ」


挑発気味ではあるが、これは本心だ。

殺さないで済むならそれに越したことはない。

リナは目的のためなら手段を選ばないところはあるが、こちとら平和と水がタダの国出身だ。

こちらの世界に来てから、体感だがまだそれほど時間も経っていないしそこまで非道にはなれない。


「家族がいるんでな」


一人の冒険者が口角を持ち上げながら斬りかかってくる。

一太刀一太刀をしっかり躱して、鎧の上から押すように殴りつける。

もし普通に殴りつけたら鎧くらいはくだいてしまうから手加減した。

俺に向けて剣を振っていた男はその拳に耐え切れず、広報に吹き飛んだ。

その際手放してしまったのか、オレに向かって彼の剣が落下してきたので空中で掴み取る。


「もっかい言うぞ、逃げても構わん」


切先を向けながら集団にそう言い放つ。

けれど誰ひとりひこうとはしない。

見上げた根性だ。


「スルト、もういいわ」


そろそろこちらから切りかかろうと、踏み込んだ瞬間、マントをリナに掴まれて無理やり止められた。

首が締まって喉の奥からぐぇっというカエルを踏みつぶしたような音がしたが、リナは気にする様子もなく集団に向かって歩みを進める。

それに合わせて集団は少しずつ後ろに下がる。


「国王をここに連れてきなさい、さもないと」


リナはそう言うと片手を空に向けて、俺の遥か後方を指し示すように振り下ろした。

それに伴い、手を振りおろし示した先で、巨大な爆発音が響いた。

慌ててそちらに顔を向けると草原の先にある山、つまり先程までロキシーと歓談していた山が大きくえぐり取られていた。

里奈に視線を戻すと先程まで開いていた手を握り締める。

再びの爆発音。

振り返ると山が更にえぐられ、そのまま見ていると三度目の爆発音とともに山が消滅した。

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