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修行

その日のうちに修行は始まった。

まずやたらと強化された五感の調整。

最初は一般人レベルの五感だったが意識することで強弱の切り替えができると言われ、聴覚と嗅覚を強化して水を探すように命じられた。

うっかり精度上げすぎて鳥の鳴き声が爆音に聞こえたり、遠く離れた動物の糞の臭いを嗅ぎ取り死ぬほどむせたのはご愛嬌。

そのほかにも視力を強化して遠くを見たり、触覚を鈍くして痛みに耐えたりといろいろできるらしい。

でもこれらの能力頼んでなくない?と聞いたところ。


「世界最強なのだからそれくらいできて当たり前、というか神の能力としてデフォルト」


と返された。

ついでにリナは修行開始と同時にシルエットではなくなった。

黒髪パッツンで目鼻立ちクッキリ、背丈は小柄だがスラリとした体型に程よい大きさの胸、推定Cカップ。

服装はなぜか赤ジャージ。

服装について聞いたら。


「修行といったらこれだろうに」


と何故か呆れられた。


話がそれたが、どうにかこうにか河を探し当てた後は体のトレーニング。

といっても鍛える必要はなく、むしろ手加減の仕方を覚えるという修行だった。

この修行では自分の家を作れと言われた、それも素手で。


流石に無茶だろといったところ。


「何もログハウスを立てろと言ってるのではないわ、ほれそこの木の幹でもえぐって雨風しのげる場を作ればよかろう。今の所はそれで合格にしてあげる」


といわれた。

どうにも口調が安定しない神だなと思いながらも木の幹を全力で殴った。

腕が突き刺さったまでは良かったんだが……その穴が綺麗なものでね、殴った場所以外には一切ダメージがないのよこれが。


「いい威力だ。ただこれが人間だったら……」


とリナに脅された。

それから三時間近く感触を確かめながら木を叩き続けた結果、どうにか木を傷つけることなく、それでいて確かな打撃音が聞こえる程度の威力まで加減できるようになった。

ただ家づくりという目的を忘れていて改めて気を殴る作業に戻ったのは余談。


その日はそのまま木の実や魚を集め、リナの魔法で火をおこし焼いて食べた。リナに頼み込んでノートとペンをもらった、日記でも書いてみようか。

その日はそのまま寝た。


二日目、この日は朝から精神統一の修行。

リナ曰く神々が一番心配していたのが力を手に入れて調子に乗るのではないかということらしい。

実際詳しくは聞かなかったが地球に帰った十一人のうち何人かは昨日の今日でトラブルを起こしたそうだ。

ともかく俺がうぬぼれたり力に流されたりしないように精神を落ち着ける修行を行うと言われた。

具体的には滝行。

最初は座禅だったがリナが河を遡ったところに滝があると言い出し、行ってみると実際に小さな滝があった。

そこで丸一日水を浴びていろと言われた。

なんとなく理不尽に感じたが逆らっても仕方ないので言われた通り丸一日水を浴びていた。

事勿れ主義なので反論するのは苦手なんです。


三日目、午前中は滝行と座禅。

午後は日頃から身体能力を抑えるためのトレーニング。

攻撃面ではそれなりに手加減できるようになったけどほかの、例えばジャンプとかダッシュなどの加減がいまいちわからないのでそういった修行。

この時はリナが神様の力を使って木々を移動させて広場を作り出していた。

大きさで言うなら小学校のグラウンドくらいある。

大きすぎないかと聞いたら修行中盤で俺に普通の家を建てさせるつもりらしい。

そのためのスペースも兼ねていると言われた。


ともかくその日の午後はひたすら跳んだり走ったりしていた。

最初加減できずに足が地面に埋まったりもしたのは内緒。


四日目、朝から晩まで滝行と座禅。

五日目から十日目、同上。


十一日目、広場にて新しい修行をはじめると言われた。

その時のリナはジャージではなくスーツを着ていた……なんとなく色っぽくてムラっときた。

その日は勉強をした。

この世界の、いわゆる魔法についてのお勉強だった。

正式な名前は【体内エネルギー変換技術とそれに伴う特異現象】というらしいがぶっちゃけて魔法と呼んでいる。

それに魔法でも通じると言われたがリナは価格の延長にある技術だと言っていた。

ともかく内容はこうだった。


魔法は体内にあるエネルギーを変換、もしくは動力源として何かしらの現象を起こすものであり、体内のエネルギー、俗に魔力と言われるものは生活環境で大きく異なる。

何を口にして、どんな環境でそだと、どんな行動をしたか、そういった環境によって体内のエネルギーは質も量も方向性も変わってくる。

質が悪ければ変換にも動力源にするにも燃費が悪くなるし大した威力は発揮できない。

ただし質が悪くとも量をつぎ込めばそれなりのものにはなる。

また質が良くとも量が足りなければ大したことはできない。

さらに方向性、大雑把に行ってしまうと魔力を動力源にする事と直接変換する事、どちらが得意かという部分も重要で動力源とすることに優れているからといって直接変換できないわけではない。

できないわけではないが直接変換が得意な者よりも効率や威力が悪くなる。


という部分が基礎らしい。

よくわからな方のでそのことを伝えたら。


「魔力というガソリンを燃やすか、魔力という形のないものを物質化させるかの違い」


と言われた。

正確には物質化ではなく水魔法なら水分を集めて水にしたり、土魔法なら空気中のホコリや飛んできた小さな砂の粒子を集めて形を形成するのだそうだが変換と言ったほうがイメージしやすいためそう言っているらしい。


十二日目、魔法の使い方を学んだ。

といっても何かをしたわけではない。ただひたすらに精神修行を続けて自分の魔力を探し出せと言われた。

ヒントとして、今いる森は魔力濃度が恐ろしく濃い、その魔力を感じられるようになれ、それができたらその森の中でひときわでかい魔力を二つ探せと言われた。

その後はそのでかい魔力の小さい方、それがどこにあるのかを理解して起こしたい現象を明確に想像。

その想像した現象を魔力に載せてた以外に放つ、これで魔法の完成だそうだ。

それを教わったあとはひたすら精神修行を行わされた。


十三日目から二十日目ひたすら精神修行。

初亀に朝ついに森の魔力を理解、その中にあるでかい魔力も感知できた。

その魔力の出処は当然だか俺とリナだった。

ともかく十二日目に言われたことを思い出して魔力がどこにあるかを理解、森全体の魔力を感知していたが感知の範囲を自分だけに限定、魔力がどこから溢れているのかを探ってみた。

その結果、胃の横あたりから魔力があふれているのを感じられた。

そこから魔力を体外に放出してみたところ成功、そこにイメージを載せようとしたが、全くうまくいかなかった。

そもそも魔力にイメージを載せるという意味を理解できなかった。

リナに聞いてみた。


「塗絵みたいに考えなさいな」


と一言で済まされてしまった。

ただこの意見はとてもわかりやすく、魔力に炎のイメージを重ねてぬりえのように貼り付けてみたところ……リナが創り出した広場で大爆発が起こった。

どうやらこれから加減を覚えないといけないらしく、三日ほどはしごかれ続けるのだろうなと覚悟を決めた。



二十五日目、思いの外魔法の威力調整に手間取ってしまった。

今ではコップいっぱいの水を手に入れることも、ライター程度の火を起こすことも、そよ風を起こして涼むことも、軽い電気でマッサージすることもできるようになった。

言われたとおり一般人にまぎれられるよう普段から魔力の放出を抑得られるようにもなった。

この日は魔法を使って家を作るための木材を用意させられた。


二十八日目家はまだ完成しない。

風の魔法を指先に纏わせてヤスリのように木を削り凹凸を作る、その凹凸をはめるようにして家を組み立てているが少し気を抜くと魔法がはじけて木材も四散する。

相当こたえる修行だ。


三十二日目、家はまだ完成しない。

形だけは出来たが雨漏りがする、どうにかしなければ。


三十八日目、乾かした植物の葉と蔓を屋根の上に敷いたのがよかったのか雨漏りがだいぶマシになった。

まだ改良の余地はあるが次に作るのはトイレと風呂だ、頑張るぞ。


四十五日目、すっかり忘れていたがここは異世界だった。

なんとなくサバイバル新婚生活を満喫してしまっていたがリナに教材としてこの世界の歴史書を渡されて思い出した。

夕飯を済ませたら勉強しよう。


四十八日目、今日も勉強。

異世界の歴史はファンタジー小説のようでとても楽しい。

俺たちがいる森はどうやらトリスティンという国の端っこにあって、魔力濃度がこすぎるために普通の人間では体が耐え切れずに弾け飛んでしまうそうだ。

他にもエルフやドワーフ、竜人に獣人とファンタジーお決まりの種族がいるが、大半の種族はこの森では生活できないそうだ。

もっとも魔力の質、量、方向性が決まっていない赤子や胎児の段階でこの森で生活すれば問題ないそうだ。

まぁ赤ん坊がそんなことできるはずがないので実質不可能だがこの森に住んでいる魚や動物はどういった方法か知らないが影響を受けていないようだ。

また魔法が使える動物を魔獣と呼び、ギルドではこれら野生動物や魔獣の討伐を推奨しているそうだ。

テンプレだなとリナに行ったところそう言った作品が元なのだから気にするなと言われた。


五十一日目、リナを抱きしめたら包丁を投げつけられた。

この包丁は俺が土の魔法で作ったものだが壁に根元まで刺さってしまった。

俺の魔法の影響かリナの力が強いのかは不明だ。

多分両方だろう。


五十三日目、ついに実践の訓練。

りなとの手合わせだそうだ。

うっかり体に触ってしまうとかのハプニングは仕方ないだろう……そう思っていた時期が俺にもありました。

触る前にボッコボコにされた。

気がついたら気絶していた。

起きたらすぐに立たされてぼこられてを一日中繰り返した。

不思議なことに怪我は一切ない。


五十五日目、どうにかリナに触れることができた、もちろん訓練の話である。

触れた直後に空中コンボを食らったがそれでも嬉しさがこみ上げてきた。

胃の中のものもこみ上げてきて口から溢れた。


五十九日目、訓練時リナに普通にさわれるようになってきた。

第二段階突入と不吉なことを言われた。

リナが武器を構えていた。

俺は相変わらず素手で戦わされている、またリナに触れなくなった。


六十日目、この世界に来てはや二ヶ月。

そろそろと思いリナを正面から抱きしめてみた。

腹を包丁でかっ捌かれた。

十秒で治った。


七十日目、再びリナの体に触れられるようになってきた。

ここに来て模擬戦の終了を告げられた。

リナに触れる機会が減ってしまった、残念。


七十五日目、朝リナに抱きつく、いつの間にか夜になっていた。


八十日目、昼リナに抱きつく、痛みに耐える修行と称して気から吊るされひたすら殴られた。

なんか新しい快感に目覚めた。


明日は重要な話があると言われた。

リナはいつになく真剣な表情だった。

つい抱きしめてしまったがまたいつの間にか夜になっていた。

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