子供たちの……
森に帰って、子供たちをそれぞれの部屋に寝かせた。
一応個室を多めに作っていたのでプライベート的なものは大丈夫だろう。
それとなぜかレイスも気絶していた。
「なんでレイスまで?」
「あんたに話しておくことがあるから」
リナが目つきを鋭くさせた。
こういう時のリナは重い話を仕掛けてくる。
前に見たのはレイスに血を飲ませた時だったか。
「連れてきた子供たち、そのうち二人は良くない考えを持っているわ」
リナの話はこうだった。
連れてきた五人のうち男女一人ずつ、よからぬことを考えている。
その内容はわかっているし誰かもわかっている。
けれどこれはリナが関わる話ではないから俺がどうにかしろ。
読心術が使えるならば使ってもいい。
何もかもが初体験だろうからそれ相応の手助けはするが今回の件ではこれが最後の手助け。
誰が何を企んで、その罪をどう償わせるかは俺次第。
余談だが不老不死になったレイスたちも神の力を持ってすれば殺せる。
しかし俺が与えたちをなかったことにはできない。
だそうだ。
「そういうことだから、あとは頑張りなさい」
しめに他人事のように応援された。
「読心術か……」
普段リナは「読心なんかしても楽しくない」と豪語していたが、あれだけ邪気にまみれた街から三十人の子供を探して、その全員が全員純真ではないだろうと予想してのことらしい。
そして、そのうえでここに連れてきたのは俺に経験を積ませるため、だそうだ。
嫁さんに大切にされて嬉しい限りだ、涙が止まらねえよチクショー。
ついでに俺はまだ読心術は使えない。
というか使いこなせていない。
今ここで読心術を使おうとすると野生動物や植物の心も読んでまともに聞き分けることはできない。
だから読心術抜きでこの件を解決しなきゃならんということだろう。
「……難しい」
そろそろショートしそうだ。
「なんでもいいから案を出しなさい、採点してあげるから」
案か……どうもこう言う深く考える行為は苦手だ。
格ゲーでもパワーキャラでぶっぱなしてるだけの脳筋先方だったし……考えがそれた。
ともかく、少し様子を見るべきだろうか。
「様子を見る、ってのは何点だ」
「五十点、状況に合わせて臨機応変に動けるようにするという意味では悪くないわ。
でもそれは相手が準備する期間も与えるということ。その準備が終わったことで取り返しのつかない事態になったら……お分かり?」
意外と悪くない点数だったけど……まだまだ万点には遠いな。
「なら……カマをかけるってのは?相手は子供だ」
「どんな内容の?」
「そうだな……俺とリナが読心術を使えること、その読心術で連れてきた五人の中によからぬ企みをしている奴がいると知っているということ、これを伝えたらどうだろう」
「伝えるだけだと四十点」
四十点か……だけだと、ってことからあれか?何か行動を追加すれば追加得点か?
「……男、どっちでもいい。笑顔を向ける」
「あら、面白いわね。その真意は?」
「もし笑顔を向けた相手が企んでいたら何かを感じるはずだ、もし違ってもあいつが何か言ったのか?と疑心暗鬼になってくれる可能性もある」
「女の子は?その手段は二人から引っ張り出すのには有向かも知れないけど三人からは無理でしょう」
「同じさ、ただし今度は一人の頭に手を置きながら残った二人のうち片方に笑顔を向ける」
こうすれば頭に手を置かれた女の子が企んでいた場合は笑顔を向けた相手が何かを話したのかもしれないと考えてくれるかもしれない。
笑顔を向けた女の子が企んでいたらその逆、頭に手をおいた女の子が何かを伝えたと考えるかもしれない。
笑顔を向けず、ても載せなかった女の子が企んでいたら二人が何か言ったと考えるかもしれない。
かもしれないばっかりだけど俺の脳みそだとこのあたりが限界だ。
「いいわ、おまけして六十点をあげる」
「それでも六十点か……」
「最良なのは読心術や言動から企んでいるやつを見つけ出して処分することなんだけどね。それが無理なら全員殺すってのも無きにしも非ずよ。
まぁ殺すのは五十点くらいかしらね、神様の尺度で言うなれば」
「人間の尺度なら零通り越してマイナスだけどな」
「あら、だいぶ神の魂と精神と肉体の折り合いがついたみたいじゃない。
以前までなら怒らないまでも顔をしかめるくらいしていたのに」
そう言われてみればそうだ。
普通に殺すとか言われたらいい気はしなかった。
というか気分が悪くなっていたはず。
けど本当に何にも感じない。
無関心でいられる。
少なくとも軽口で返す様なことはできなかったはずだ。
これが今の俺ということなんだろうな。
なんとも不思議だ。
「それで、どうするの?殺す気はないのよね」
「あぁ、とりあえずあいつらが目を覚ましたらカマかけてみるよ」
「結果を楽しみにさせてもらうわ」




