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神と子供

〈side リナ 時間は少し遡ってスルトが地球にいた頃〉


さて、スルトは行ったことだし私は準備を進めるとしようかしら。

まず兵士の肉体改造でしょ……それから剣の準備も必要よね、それにこの子供のこともどうにかしなきゃね。


「お呼びでしょうか」


「えぇ、そこの兵士の肉体を英雄らしく改造して頂戴、それとこの子供について調べて」


直接精神に語りかけて呼び出した天使に命令を下す。

私のすぐ後ろで一礼しているのが見るまでもなく分かった。

そして、その例を終えた瞬間、一束の書類を天使は差し出してきた。


「ありがとう、兵士の造形はお任せするわ」


そう言いながら書類に目を通す。

子供の名前はレイス、現在十歳……てっきり六歳くらいだと思っていたわ。

随分と肉付きが悪い、栄養が足りていないのでしょうね。

それに髪も伸び放題な上にボサボサ、服もひどいもの、書類にあるとおり家無しの乞食みたいね。

それと……あら?同じ境遇の子供たちのリーダー的存在、さっきのリンチはほかの子供たちのために食べ物を盗もうとして捕まったということね……てっきりこの兵士たちの憂さ晴らしかと思っていたけど早とちりだったみたい。

少し刑を軽くしておかないと。

そうね、百回畜生道を繰り返したらまた人間として転生できるようにしておきましょう。


それはともかく……。


「起きたのならおはようくらいは言いなさい」


「……おはよう」


書類に目を通しているうちに子供、レイスが目を覚ましていた。

背中越しでもこの程度は分かる、肉体がある分さっきの天使よりもわかりやすい。


「レイス、あなたは何があったか理解している?」


「……はい」


「そう、それなら言葉にしてみせなさい」


「兵士たちにボコボコにされて、助けてって言って、男の人が血を飲ませて、お姉さんとその男の人が兵士たちに何かをして……」


そこでレイスの言葉が途切れた。

今の私は力を制限している上に書類や剣のことでていっぱいなので考えを読み取ることができない。

いくら最高神の中の最高神といっても全能ではない、万能だろうが億能だろうが全能ではない。


「続けなさい、不完全の者とは言えあなたは神の血を飲んだのよ。多少の知恵は得たでしょう」


「半永久の命……全盛期で老が止まる……無限に近い魔力……魔族を殴り倒せる力……すべての魔法に対する適正と耐性……あらゆる傷を瞬時に治癒させる……」


知識として得たであろう自分の身体の特徴をつらつらと少年が上げ始めた。


「まだあるでしょう」


「血の送り主には絶対服従……」


「正解、でも安心しなさい。あなたに血を与えた男は甘ちゃんだからあなたの意思を優先してくれるはずよ。私とは違ってね」


私の言葉にレイスがの表情が凍りつく。


「私なら皮が剥がれ肉が素げ落ち血は蒸発し骨は砕けるまで酷使して、その骨の髄まで搾り尽くして残ったカスは暖炉に焼べるくらいはするから」


たとえ搾りかすでも燃やして暖をとるくらいはできるからね、使い道があるならいくらでも使う、効率的でしょう?


「そんな……」


「だから安心しなさい、あなたに血を与えた男は本物の甘ちゃんなのよ。まだ魂が人間のものだから随分と神らしくないことをしているしね」


「神……」


「知識を得たならわかるでしょう、そこであなたをいたぶっていた兵士を前に腕組みしている存在がなんなのか、それを誰が指示しているか、私がなんなのか、地を与えたのが誰でどんな人物なのか、それくらいの知識は得たはずよ」


逆に言ってしまえばそれだけの知識しか得ていない。

自分の肉体のこと、神のこと、この二点だけの知識だ。


「手が空いていて動けるなら今から言うとおりにしなさい」


「はい……」


私の言葉にレイスが反応してベッドから立ち上がった。

そのままおぼつかない足取りで私に近づいてきた。


「私の隣に座って、そうそのまま私の服の裾を掴んで」


レイスは言われたまま動く、私の言葉に強制力は一切ないにもかかわらずだ。

おそらくではあるが本能か血が逆らえないようにしているのだろう。


「今から私が何をしようとしているのか教えるわ、でも忙しいからあまり気を回せないの、だからこのまま知識として今後何をするか教える、いいわね」


「はい」


その返事を聞いてすぐに、服を通してレイスに知識を流し込んだ。

その瞬間、レイスは立ち上がって目を見開いた。


「私には本来命令権はないんだけどね、でもあなたに血を与えたのは私の夫なの。その夫から命令権を少し失礼して言うわ『あなたの友だちを安全な所へ避難させなさい、できるだけ急いで』」


私の命令を聞いてレイスは窓から飛び出していった、これで少年の友人は無事だろう。

こんなことを気にかける必要はなかったが、するとならこうしたと思う、その一心で命令した。

また血の主従関係だろうがなんだろうが最高神の力を使えば命令なんていくらでもできた。

でも今回はあえてスルトの命令権を使った。

なんとなく、私の旦那と物事を共有するという実感が欲しかったから、そしてスルトならこうしていたと思ったから。





それから一時間してレイスが、さらに一時間してスルトが帰ってきた。

レイスは帰ってすぐ私の服の裾を掴んで寝てしまい、私はすべての準備を終えてぐったりしていたところだった。

結局、スルトを見て安心したのかそのまま意識を手放したので、スルトが帰ってきてからのことは知らない。

ついでにレイスが帰ってきて私の服の裾を掴んだ理由も知らない。

するとくんが地球に行っていた間の出来事と、子供ことレイス君がするとくんに怯えていた理由、あとリナの密かなデレモード回でした

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