理想と現実
皆様いかがお過ごしでしょうか
私は指の肉も復元しつつある今日このごろPCがトロイの木馬系ウィルスに感染しここ一週間の深夜アニメを見逃したりグレンラガンを見逃したりで大いに凹んでいました
また悪いことというのは続くもので卒論のゼミ代表発表者というものに選ばれ四苦八苦しております
そんな私ですが誤字脱字を徐々に徐々にではありますが回収させていただいております
地中を進むモグラの速度にも劣る愚鈍さですがどうか生温かい目でお見守りください
「大丈夫か?」
兵士たちにいたぶられていた子供に駆け寄り、その首に手を当てる。
指先にはかすかに解くんとくんという脈が伝わってくる。
早くて弱い、確か結構まずい状態だった気がする。
「リナ」
「やるならあなたがやりなさい、その責任をすべて背負えるなら」
俺が何を言うのか聞くまでもなく理解してくれたようだ。
俺はこの子供を助けるべきなのかどうか迷っている。
この肉体になってから、具体的には森を出たときリナには様々なことを言われた。
例えば今回のように誰か死の淵に立っている人がいる。
その人を俺が助けようと思えば、たとえ一度死んだ相手だとしても生き返らせることは可能だそうだ。
しかし、俺やリナが助けた相手はもはや普通の人間ではなくなってしまう。
助ける際に使う力の余波が肉体を活性化、寿命を大きく伸ばし、その力も格段に上がるそうだ。
もし、相手が死を望んでいたならば、それは何より残酷な仕打ちである。
もし自尊心のためだけに助けたいと考えての行動なら殴ってでも止めるが相手の全てを背負ってでも救うと言うならば一切の口出しはしない、リナにはそう言われた。
他人の全てを背負う、それがどれだけのことか俺にはいまいちわからない。
ただ途方もない苦痛が伴うであろうことは容易に想像できる。
それを、俺は背負うことができるのだろうか……。
「た……て……」
なにか声が聞こえた気がした。
「たす……けて……」
声は俺の足元に、ボロ雑巾のようになるまでいたぶられた子供からだった。
その子供は確かに助けてといった、悩んでいる場合ではないよな。
「まかせとけ」
聞こえているかはわからなかったがそう答えた。
まずうつ伏せに倒れていた子供を仰向けに寝かせる。
髪は短く、その顔はあざとドロで歪んでいる。
あの兵士たちが地獄に落ちることを願うばかりだが今はそれどころではない。
懐にしまっておいたナイフを取り出し俺の指先を少し切る。
血が滲んできたところその指を子供の口に押し込んだ。
リナ曰く血を媒体として相手の肉体に魔力と神の持つ力を分け与えることで治療する、らしい。
死者の蘇生にはもう一つ魂と精神を呼び戻す儀式が必要らしいが今回はこれで十分だろう。
口に指を突っ込んだまま首筋に手を当てると脈拍も力強く、落ち着いてきている。
もうだいじょうぶだろう。
「リナ、一度宿に戻ろうと思うんだが……」
ひとまずこの子供をゆっくり休ませてやりたい、そう想いリナに話しかけた。
そのついでに振り返った俺の目に飛び込んできたのは手足の吹っ飛んだ兵士に自分の血を飲ませているリナの姿だった。
「リナ……?」
「あら終わったの?スルト」
「えーと何をしていらっしゃるのでしょうか」
「聞きたいことがあったのにスルトったら殺しちゃうんだもの。次からはもう少し手加減しなさい」
「あ、はい」
どうやら手足だけを吹っ飛ばした兵士も死んでいたらしい。
リナはその兵士を蘇生させているようだ。
「それで、何を聞きたいんだ?」
「この街のあり方、これだけ汚れた理由、その他諸々を」
「なぜ」
「私はね、私が作り上げたこの世界が汚れていくのを見ていられないの。私の理想を下に作り上げたこの世界を汚すやからが許せないのよ。だからそれ相応の天罰を下すの。今日このいざこざに巻き込まれなければ放置していたのだけれどね」
少し、このリナの発言に腹が立った。
自分のものを汚されるのが気に食わないという気持ちはよくわかる。
だけど、だからといって何千という人々を巻き込んでの天罰なんてモノは果たして必要なのか。
そう思った俺は甘いのかもしれない。
「気に食わないから殺すのか、神様ってのは勝手なもんだ」
「そうよ、神様なんてのは勝手なの。その神になろうというのがあなたなのよスルト。あなたがこれからなるのはそういう存在なの、覚えておきなさい」
皮肉を言ったつもりだったが言い負かされてしまったきがする。
というか確実に言い負かされてしまった。
ただ少し寂しそうな顔をリナがしていたのが気になってしまった。
「肝に銘じておくとするよ、ただ俺たちは夫婦なんだから相談くらいはしてくれよ?勝手なのはしょうがないとしても勝手すぎたらついて行くのも大変だ」
寂しそうな顔が気になってつい怒りを収めてしまった俺が居る。
でもあの表情をされたら誰もが俺と同じ行動をしたと思う。
「あら、主と使い魔じゃなくて夫婦なのね。まだABCのAすらまともに終えていないのに夫婦……ふふふ」
一瞬驚いたような表情を見せたりなだったがすぐに意地悪な表情にかわった。
だがあえて言わせてもらおう。
「リナ顔真っ赤だぞ」
照れ隠しする女の子、素晴らしい破壊力だ。
「スルト、あなたも耳が真っ赤よ」
……そのしてきでみみがあつくなりました。
勝ち誇っていたら逆に攻められるとは……でも赤面を指摘された時のリナの表情は永遠に忘れない。
「全く似た者夫婦というのかね」
「悪くないと思うわ」
リナの表情はさっきまでのさみしさあふれるものでもなく、怒りに満ちたものでもなくなったようだ。
うまくいったのかは不明だがひとまずは落ち着いてくれたらしい。
「それで途中だったが一度宿に戻ろうと思うんだが」
「そうね、その子供も休ませてあげないとね」
さすが 俺の嫁、俺と同じことを考えたみたいだ。
そうと決まればすぐに宿に戻るとしよう。




