深夜の二人
〈side スルト〉
眠れない……。
齢二十一にして未だ女体の神秘に触れたことのない、いわばチェリーボーイが美人な嫁と床を共にしておとなしく眠れるだろうか、いや眠れない。
チェリー関係なしに目の前に美女の寝顔があるとかいろいろ気になって眠れるわけもない。
なによりさっきから寝苦しいのかリナがもぞもぞ動いてその度に体が触れ合ったりいい匂いが鼻腔をくすぐったりと……。
……素数を数えて愚息を落ち着かせるか。
首とか動かそうと思えば動かせるし魔法による拘束だってやろうと思えば解けなくもない。
それにさっきから体が触れ合っているんだ、その気になればどんなことでもやれる。
リナだってそのことを理解していないはずがない。
それでも一緒に寝てくれているんだ……その信頼には答えたい。
1、2、3、5、7、11……あれ?1は素数じゃなかった気が……まぁいい、そういえば円周率は……掛け算って……おっぱいは髪の作り出した芸術……雨ニモマケズ風ニモマケズ……十三キロや……。
結局俺は寝付けず朝を迎えるまで煩悩を押さえ込もうとしていた。
ちょっと危なかった。
〈side リナ〉
眠れない……。
神になって数千年、享年は忘れたけどそれまでも恋愛なんか経験したことなかった。
そんな耳年増な私の目の前には私の夫が……そういう設定とはいえそんな人物が寝ている……。
拘束しているとはいえ今のスルトなら解けなくもないレベルのものだし首とか動かせばちょっと私に触れるくらい簡単にできる……。
スルトはさっきからブツブツ数字を数えたりしているから起きているのはバレバレなの。
いつもみたいに夜這いとかしてきてもいいのに……って考えたらなぜか胸がズキってした……なんだったのかしら。
今日くらいはもうちょっと強気に出てくれたら私も流れに乗れたかもしれないのに……。
だからといって身体まで許す気はないけど口づけくらいなら……あ、顔が熱い。
本当に寝にくいわ。
明日は早く買い物済ませて街から逃げなきゃいけないってのに……。