疑惑の街メスティア
「どう思う、リナ」
街に入ってすぐ、リナに質問をぶつけた。
なにを、と言わなくてもわかってくれるだろう。
「普通に考えて私が地上を見てなかった数世紀の間に何らかの理由で町が成長した。その途中で何かしらの事件があって街の名前を変えたと見るのが正解なのだろうけど……あの兵士たちは変だった」
「変?確かに横暴だったけど……というか外にいたの瞬間移動させたの誰かにバレてないだろうな」
「当たり前じゃない、あの程度神の特権使えばなんとでも出来るわよ」
「神の特権?」
この世界に来て三ヶ月、俺の肉体が持つ能力や一般人のステータスについては聞いていたが神の特権なんて言葉は一回も聞いたことがない。
そもそも神様に関する説明自体ほとんどされていないから何とも言えないけど。
「神の特権、神は自分の作った世界であれば条件付きではあるけど許される。例えば拉致、自分が選んだ相手に何かしてもらいたい事がある場合のみ許される。これを応用して拉致したの、そこに記憶の改変。今まで説明していなかったけど結構つかてきたわよ?」
「……俺とゼミのやつらを連れてきたのもそれか」
「そうね、それがスルトに見せた最初の特権ね。その後は自分に敵対する者の命のみ奪っても良いとか、世界に影響を与えない範囲でならば物質の改変を行って良いとか、命の宿っていないものでえあれば複製して良いとかそういったもんを使ってたわね。ほら、森で勉強すると気に使った本なんかは複製して持ってきたのよ。」
「あーあの改変とかそうやって……」
毛皮を使ってカーテン作ったり、木を紙に変えたりってのはこの改変だったのか。
命を奪っていいっていうのはわかったがあの森の猛獣はよっぽど命知らずだったんだな、神に挑むとか……いや、自分より強い奴に会ったことがなかったのかもな。
「それより問題はこの街よ、神の特権の一つに無条件で使えるものがいくつかあるの。そのひとつ、他人の邪気を目視できるというものがあるんだけど……さっきの兵士といいこの街の住民といい少し変」
「邪気を目視か……邪気眼ってやつだな」
厨二病乙、とか言ったら殴られるんだろうな。
でも邪気眼って懐かしいななんか。
俺にはそんな時代なかったけどよくネットでは見かけてたネタだったからな、たった三ヶ月なのにネットが懐かしく感じる。
「厨二病はどうでもいいのよ、問題はどいつもこいつも邪気がかなりの濃度と量が溜まっているということよ」
「なにかまずいのか?」
「まずくはないわ、せいぜい本人たちが死後地獄に落ちるだけだから」
それは……本人たちにとってはかなりまずいけど俺たちには関係ないな。
なら問題ないか。
「ただね、ここまでの濃度というのが気になるの。普通溜まっても、そうね……量で言うならあの桶一杯分くらいの量ね」
リナが指さしたのは井戸から水を汲み上げるための桶、風呂桶と同じくらいのサイズだ。
「濃度でいうならそこに砂糖大さじ三倍加えたくらいと言えばいいかしら」
「すまんその例えはよくわからない」
「邪気は砂糖水、甘さと量でどれだけ悪人かわかると考えなさい。それに対してこの街の住民の邪気はバスタブ一杯分くらいはあるわ、それに濃度だって濃い……舐めた瞬間顔をしかめるほど甘い砂糖水と考えなさい」
ようやく理解できた。
普通の人はほんのり甘いかな程度の砂糖水、この街は甘すぎる砂糖水、量も濃度も段違いということか。
「何が起こっているのやら」
「知るもんですか、でも言えることはひとつ……長居は無用よ」
「あぁ、できれば今日中に買い物を済ませてとっとと他の街に行こう」
そういった俺の顔をリナが覗き込んだ。
微妙にニヤニヤしているのが気にかかる。
「なんだよ」
「てっきり異世界トリップの主人公みたいに『この事件を解明してやる』とか言い出すかと思ったわ」
「そんなことするわけないじゃん、面倒くさいしリスクでかいしリターン無いじゃん。第一解明してどうなる問題でもないんだろ?」
「そうね、ここまで邪気が貯まるなんてのは街ぐるみでロクでもないことをしているのは明らかね。もう地獄に落ちる以外の選択肢はないわね。」
「だろ?だったら俺達は巻き込まれないうちにとっとと逃げるだけだ」
「ふふ、この三ヶ月で判断力も身に付いたみたいね。殺気立ってあの兵士の質問に答えていたし。あそこで私みたいにハイイイエで答えていたら背中の肉引きちぎっていたわよ?」
あの時そんな恐ろしい状況だったのか……選択肢間違えないでよかった。
「あそこで下手に喧嘩売って街には入れないのは嫌だったんでね」
「その判断で正解よ、さて、続きは宿の中でしましょう」
「そうだな、その前に宿を探さなきゃな」




