もうすぐ到着最初の町
馬車馬としていいように使われ続けて五日が経った今日、ようやく町の外観が見えてきた。
リナ曰くモンスターの被害防止のために大きな壁に囲まれているらしい。
まだフルマラソン二回分くらいの距離はあるけど強化された視力のおかげではっきり見える。
「あそこはなんて町?」
「昔見たときはユーリカの街だったと思ったけど……あんなに大きくなかったはず」
この五日間でリナも女の子言葉になれた。
まだたまにつっかえたり素が出たりするけど森を出たばかりの頃と比べたらかなりスムーズだ。
ついでに夫婦として振舞う練習もしました、はい。
といっても大したことはしていないけどね。
肩を抱き寄せるとか、髪を結ぶとかそのくらい。
ただまぁ……一回だけ、頑張っているご褒美と言って膝枕してくれた。
控えめに申しまして……最高でした。
俺はもう死んでもいいかもしれない。
あとはこの数日感、魔獣とかモンスターとかそういう類の生き物に襲われることはなかった。
この世界に住む人は地球人と比べたら第六感とかかなり鋭いらしいけど、それでも魔獣や獣には劣るらしい。
そんな魔獣や獣は人には感じ取れない危険性や潜在能力を見抜いて勝てるかどうかを見極めて喧嘩を売るとかなんとか。
そして勝てないと考えた相手には立ち向かわないという話だ、もちろん例外はあるらしいが。
そうこうしているあいだに町までの距離は半分になった。
強化バンザイ、フルマラソン一回分の距離がものの一時間ちょっととは……全力でなくとも車並みの速度で走れるわけだ。
俺が全力で走ろうとすると俺の足が地面に埋まるから魔法の補助がないとできないんだけどね。
「リナ、あと半分くらい近づいたら歩くけど問題ないよな」
「えぇ、もちろん私は乗っていていいのよね」
言葉から「いいに決まってるよな?」とにじみ出ているのは気にしないでおこう。
この五日間でリナに勝てないのはよくわかったから。
いや、喧嘩とかしてないよ?
いろいろあっただけ、うんいろいろ。
例えば三日目の朝、疲れて寝ぼけていた時水魔法で作り出した大量の水を浴びせ掛けられて流石に文句言おうとしたとき。
乾いたタオルで頭をゴシゴシと拭いてくれましてね……猫のような気分になりながらもなんか満たされました。
しかもあのリナが「疲れているなら言いなさい、夫婦なんだから」とか言ってくれてねもう。その後元気になって、リヤカー弾いてる時後ろから計画通りなんて声が聞こえたのは気のせいだと思うよ、うん。
他にも四日目は起きた時「見張りの時ヒマだったから朝食作っておいたよ、一緒に食べよう」と言われていろんなところが元気になったりしたし、もちろん計画通りなんて空耳も聞こえたけどね。
あとは今朝か、今日は俺が見張りをやっていたけどうたた寝しちゃってさ……でも起きたら毛布がかけられてて……最高の嫁です!
朝食の時居眠りしていたことものすごく怒られたけど。
もともと野生動物には襲われないけど野党とか盗賊がきたらってための見張りだからね……さすがに居眠りはまずいと反省しました。
なんにせよリナがあざとくて可愛くてアメとムチの使い分けが秀逸で、とにかくあらゆる意味で勝てる気がしないのですよ。
「そろそろ速度を落としなさい」
「ん? もうそんな距離か」
ここ最近の楽しかったこと考えていたら残り二十キロ近くとなったので歩くことにする。
後三時間ほどすればあの街にもつくだろう。