表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

第9話

ある日突然、兄さんが壊れた。


ーーいや、ホントはそんなに突然でもなかったのかもしれないけど。


それまで表面上は、兄さんは落ち着いていた。

抑えた口調で、ジェイを義姉さんの名前で呼び、あくまで義姉さんとして扱った。

ただ、接触自体は減らしていた。

仕事だと言って、家にいる時間を減らし、視線をそらし


それに対してジェイは、特に気にする様子もなく、自然に振る舞っていた。

「彼も、時間が必要なんだろう」そう言って。


この人、どういう人なんだろうなあ。思いながら、何だか聞けずにいる。


ジェイが何を言ったとかではなく、ただありのままでいるだけで、兄さんは追い詰められていくようだった。

そして。


いつもよりさらに遅い時間に、運転手もボディーガードも伴わずふらふら戻ってきた兄さんは、 屋敷の玄関ホールに、そのままうつ伏せに倒れた。

ケンカ沙汰にでも巻き込まれたのか、ズタボロの格好で、濃厚なアルコールの臭いをさせて。


何となく心配で起きていた僕とジェイが、物音に気づいて様子を見に行くと。

やっとのように顔を上げた兄さんは、真っ直ぐジェイに向かって手を延ばして。

「メアリ」と、呟く。「ーー何故だ、メアリ」普段とはかけ離れた、ひどく細い声だった。

ジェイは兄さんの傍らに腰を落とし、黙ってその手を取る。

「どうして……? 君さえーー君さえ、傍にいてくれるのなら、俺は……」

言いかけて、意識を失ったらしく、そのまま倒れ伏す。


ジェイは、溜め息をついて首を振ると、僕を振り返り。

「済まないが、手伝ってくれないか? さすがにこの体で、一人で彼を運ぶのは無理そうだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ