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第8話

投稿予約した後、ちまちま手直ししてたら、この回やたら長くなってしまいました。

本当は二分割した方がよさそうですが、細かい操作がややこしそうなので、このまま投稿します。すみません。

結局、ジェイは主寝室の続き部屋に落ち着いた。


主寝室とは内廊下で繋がっていて、父さんが主寝室を使っていた頃に使われていた部屋らしい。

といっても、日頃父さんは母さんべったりで、仲良く主寝室を使っていたから、僕がお腹にいた頃とか、ほんの一時期しか使われていなかったみたいだけど。

あ、前の奥さんはけっこう使っていたって話だったかな?

兄さんのお母さんの話って、僕はあんまり聞いていないんだよね。


内廊下の両側に扉があって、それぞれの部屋から鍵がかけられるらしいけど……。その辺りがどうなっているかは、僕はノータッチだ。うん。



「なるほど。じゃあ君のご両親は今、南の島にいるのか」

「うん。事業なんかはもう兄さんに引き継いじゃってるし。義姉さんが嫁いで来て安心した、っていうのもあったのかな? 気候のいいところで、二人で仲良く余生を送ってるみたい」


僕はジェイと、午後のコーヒータイムを楽しんでいた。

学校の方には『家庭の事情で』休学扱いにしてもらったんで、時間はあるんだよね。先生も協力的だったし。どうやらあの、義姉さんの”生存扱い”裁判以来、兄さんの精神状態、アブナいと思われてるみたい。

ビジネス面の評判には、影響出てないみたいなのにね。


「うん、いい香りだ」カップを手に、ジェイが満足そうに呟く。

研究所では嗜好品を制限されて、ストレス溜まってたんだって。

義姉さんは紅茶党だったけど、ジェイは根っからのコーヒー好きなんだって。食べ物の好みも義姉さんとは違うみたいだし。同じ舌を使っているのに。謎だ。


「さて、時間だな」

コーヒータイムは投薬の時間とかぶることが多くて、ジェイが毎度、大量の薬を取り出してくるのには、ぎょっとさせられる。

「……少しはそれ、減らせないの?」

「さあな。この体を”生きている”状態に保つために必要だと言うから、ある程度量は多くなるんだろうが。研究所の収入を増やすために、不要な薬が混ぜ込んであったとしても、驚かないぞ」

……うわぁ。嫌な話。

「不要といえば、女性用の避妊薬も含まれているそうだ」

ぶっ。危うく、コーヒーを吹きこぼすところだった。

「まあ、この状態で」と、ジェイは大量の薬を指差す。

「妊娠を継続できるとも思えないから、ある意味妥当な判断なんだろうが」

さいですか。

「薬ごとの効能も、研究上の秘密とやらではっきりしないし、状態が変わって、研究所に連れ戻されると厄介だから、今のところ全て飲んではいるが」

研究所は、まるっきりアウェーだからな。

そう言って笑う表情の剣呑さを見ると、ジェイも研究所に対して、かなり含む所があるようだ。


「ときに、君のご両親だが。まだ余生というお歳じゃないんじゃないか?」

「うん。でも、兄さんがめちゃくちゃ有能だったから。さっさと引退できてラッキーだったって、父さんが……」


でも、兄さんにしてみれば、理不尽じゃないのかな?

跡継ぎだからって厳しく育てられて、必死に期待に応えてみれば。当の父親は、歳の離れた後妻といちゃつくために、兄さんに重荷背負わせてとっとと隠居、って……。


僕だったらグレているとこだけど。兄さんはなまじ真面目でプライドが高くて優秀だったせいで、頑張って頑張って、頑張っちゃったんだね。

十代前半で大学院まで出て、働き始めて。二十代で事業引き継ぐなんて、いくら兄さんが優秀でも、いろいろなげうたないと無理だもん。

プライベートなんて無いくらい、ただ働いて業績を上げて。


おかげで大株主の父さんは、配当と不動産収入で楽に暮らせたんだよね。

時々起業家向けの講演なんかやっている以外は、趣味の陶芸を楽しんだり、母さんとのんびり庭仕事したり。まだ小さかった僕を連れて、犬の散歩や、ボール遊び。


兄さんにとっては要求の多い厳格な父親だった人が、僕から見れば、末っ子に甘い優しい父だ。


「それで君は、お兄さんに引け目を感じているのか?」

「そうじゃないけど」

全ては巡り合わせというもので、僕にどうにかできたようなことではないけれど。


でも、義姉さんと知り合う前の兄さんの生活が、どんなものだったのか。

兄さんにとって、どんなに義姉さんが全てだったのか。


考えると時々、何とも言えない気分になる。


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