第5話
立つ姿勢からして、全く違っていた。
姿形は、まるっきり義姉さんなのに。
服も靴もアクセサリーも、義姉さんが生前身に付けていた、フェミニンなものなのに。
歩き方は、義姉さんの独特のふんわりしたものではなく。姿勢がよく、何か武道でもやっていそうな堂々としたもので。
「やあ、君が弟くんか」
滑舌のいい喋り方や、握手の手を差し出す快活な仕草は。 義姉さんが持っていた、大人の女の人らしい愛らしさとは、異なるもので。
「はじめまして」
握手と同時に言われた言葉で、はっきりした。
この人はーー外側はともかく中身は、義姉さんとは別人だ。
「はじめまして、じゃないだろう? 君は、弟とは仲がよかっただろう?」
抑えた口調で言う兄さんのことは、とりあえず置いておいて。
「あなたのことは、何とお呼びすれば?」僕は目の前の相手に、意識を集中する。
相手は、面白がるように僕を見ると。
「私のことか? そうだな、ジェイと呼んでくれ」
「ジェイ、ですか。はじめまして、どうぞよろしく」
「こちらこそ。君は話が早くて助かるな。君の兄上は、いささか物分かりが悪くてな。未だに私を、メアリと呼び続けているんだ」
困ったものだ、と肩を竦めるジェイを見ながら。予想は半分だけ当たったな、と思う。
当たったのは、「還ってきた」義姉さんの中身は別人だろう、と言うこと。
外れたのは、その中身は到底好感が持てない人物だろうということ。
後半が外れてくれたのは、正直助かるな。