第3話
”ルドルフ・ミュラー・シュミット 再生医科学研究所”。
「禁断の」死者再生の研究をしている機関。
そして、兄さんが多額の寄付金とともに、義姉さんの遺体を預けているところだ。
義姉さんの死は、ある日公衆の面前で起こった。
平和なはずの市街地で突然発生した、白昼堂々の銃撃戦に巻き込まれたのだ。
流れ弾が当たって即死、だったんだけど……。兄さんは絶対に認めようとしなかった。
義姉さんの「生還」を頑なに信じる兄さんの指示のもと、遺体は、かの研究所に直送され、他の数多の遺体の「眠る」部屋で、冷凍保存された。
葬儀も上げられることなく、埋葬もされないままで。
多額の費用をかけた裁判で、義姉さんの書類上の「生存」を勝ち取った兄さんを、誰も止めることはできなかった。
僕もーー何も言えなかった。
僕自身、ショックを受けていたけれど。
僕は義姉さんのことが好きだった。
もちろん、兄さんに後ろから刺されるような種類の好きではなく、普通に家族として、好きだったのだ。
義姉さんも、僕を家族として好いてくれていたと思う。
弟ができて嬉しいと、言ってくれていた。
義姉さんはもともと一人っ子だし、従姉も女性ばかりで、弟というのは、初めてだったそうだ。
義姉さんと一緒なら、お喋りもゲームするのも、ショッピングに連れ回されるのさえ、ーーちょっと閉口したけどーー楽しかった。
そんな義姉さんの遺体が、僕には到底信用できない研究所の中で、彼らの研究のために利用されている。
たまらなく辛いことだったけど、受け入れるしかないことだった。
決定権は、義姉さんの夫である兄さんにあり、そして兄さんは、絶対に義姉さんを失うまいと決めていた。
何に変えても。
1~3話まで固めて投稿しました。
後は、ストックがつきるまで、毎週投稿したいです。
→一話ずつが短めなので、5/2からストックが尽きるまで毎日投稿に切り替えました。
ちなみに、1話ずつの長さはまちまちです。