第17話
翌日。
訪れた施設で通された部屋で、現れた担当のエンバーマーを見て。
兄さんは挨拶の前に「やはり男か」と呟いて、ジェイに足を踏まれていた。
施設長と契約書を 交わすためと称して、兄さんが部屋を出ると。
エンバーマー氏は、僕に向き直って、握手の手を差し出した。
「カイ・イスルギだ。こいつとは、長い付き合いになる」
僕も慌てて名乗って、手を握り返しつつ、浮かんだ疑問を尋ねてみた。
「こいつと、って? 義姉さんと? それとも、ジェイと?」
「両方だ」
答えながら、イスルギさんはジェイに向き直って。
そして、深々と溜め息をついて言う。
「全く、無茶をする」
「そうか?」
「瑞姫がからむと、昔からおまえは無茶苦茶だ」
「そうかもな」
「あのぅ……。無茶をする、って?」僕が尋ねると。
「魂が長時間体を離れるというのは、危険なことだ」イスルギさんが答える。
「これだけ長期間にわたるのなら、普通なら、本体の方はとっくに死んでてもおかしくない」
「え、ええぇぇぇっ!」
「体の方は、師匠に預けてある。めったなことにはなっていないはずだが」
「まぁ、確かに嫌な気配は無いな」
「そうだろう」
何だ、おどかさないで欲しいなあ。そう思っていると、イスルギさんは、さらに僕を仰天させる発言をする。
「それで、おまえ、胎の子はどうするつもりだ?」
「何のことだ?」
「隠しても無駄だ。その体、子を孕んでいるだろう」
ーーな、何ですと!?