第13話
「知り合い? そうだな。彼女は、私の初恋の女性だからね」
兄さんの眉が、ぐぐっと寄せられる。
「そして、親しい身内でもある」
「ええっ!?」
続くジェイの言葉に、僕は思わず声を上げた。
「? 何だ、その驚きようは」
「だって……」
義姉さんの身内って、女系の印象が強いからなぁ。
義姉さんのお母さんって跡取り娘で、お婿さんを迎えたんだよね、確か。
で、義姉さんは一人っ子で、結婚の時にいろいろ揉めて。
義姉さんの従姉妹は四人姉妹で、話に聞いただけだけど、結構強烈な人たちだったような。
上から、カオルコ、ミドリコ、サクラコ、ユカリコ、だったっけ。うち三人は兄さん達の結婚式に来てたらしいけど。遭遇しなくてよかったと、つくづく思う。
男の身内って、……お父さんや叔父さんの話は出てたけど。義姉さんが初恋ってことは、同年代か年下だよね。
うーん……聞いた覚え、ないなぁ。
兄さんに知られると厄介だから、言わなかったとか?
なんて考えているうちに、兄さんの表情が、だんだん物騒になっていくんですけど。
「……出ていけ」
兄さんが、ジェイのーー義姉さんの腕をガッと掴む。
「メアリの中から、即刻出ていけ!」
「そうしたら、空になった器におぞましい輩が入り込んで、好き勝手始めるぞ」
「何だと!?」
「そうさせたくないから、瑞姫は私に頼んだ。君が納得するまで、この器を埋めていてくれと」
「……メアリが?」
「ああ。そのままにしておくと、どんな素性の魂が入り込むかも分からないんだ。殺戮者なら、身近な人間から血祭りにあげるだろうし、色情狂なら、そこらの男を捕まえて交わり始めるだろう」
「……!」
愕然とした表情で、兄さんはジェイから手を離す。
「器であっても、君が愛してくれたものを、そんなふうに使われたくないと、瑞姫が泣くから。だから私は、ここにいるんだ」