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第12話
「”器に入り込んだもの”に振り回されたご遺族の元に、今、我々の仲間が説得に伺っている。
ほとんどが、”死者”を改めて死者にすることに、同意して下さっている」
「では。君がここにいるのは、俺を説得するためか?」
「いいや」
兄さんの質問に、ジェイは否定を返した。
「君は、自分の目で見ないと納得しない。納得しなければ説得などされないだろう。そう、瑞姫が言っていた」
ーーミズキ?
兄さんの眉が、ぴくっと反応した。
久々に聞く、義姉さんのミドルネームだ。
この国では発音しづらそうな人が多いので、省くことも多いと義姉さんは言っていたけど。
一応、兄さんと結婚する前の顔合わせの時は、当時のフルネーム、”メアリ・ミズキ・シドウ”を名乗ってくれていた。
この国の人はほとんど使わない、逆に、義姉さんの母国の身内や友人の、ほとんどが使っているというその名前を、ジェイは随分とクリアに発音したと思う。
ーーつまり。多分、ジェイは。おそらく。
「義姉さんの、知り合いなの?」